19 仲間の妖精たち
「マノノー!」
「ラノ! みんなっ」
人混みに混ざっていると、みんなが私に気づいて手を振ってくれている。
私も飛び上がって手を振った。
「あっ、マノノ様!?」
レノンは驚いて声が出た時、周りの人たちはみんなレノンを見ている。
「レノンが聖樹の前に来たら、マノノ戻ってくるね。大丈夫!」
「わ、わかりました」
レノンは少し恥ずかしかったようで小さな声で話をする。
久々に聖樹に戻ってきたのと、みんなに会えた嬉しさで踊りながら聖樹に向かった。
「マノノ! もう元気になった? みんな心配してたんだから」
「うん、心配かけてごめんね。マノノはみんなのおかげでこの通り! すっかり元気になったよ」
「良かった。シャンはずっと心配してたんだから」
「シャンは?」
「あそこよ」
「シャンー!」
みんなにぎゅっとハグした後、私はシャンのところへ飛んで行く。
シャンは少し照れているのか木のうろから街を見下ろしていた。
「マノノ。もう大丈夫なのか?」
「うん。シャン、朝露ありがとう。おかげでこの通りだよ」
私は艶のある羽根をぱたぱたと広げて見せる。
シャンはほっとしたように私の頭を撫でた。
「よかった。今日はあの人間と一緒に来たのか?」
「うん。聖樹の祭りだから一緒に来たの。でももうすぐ帰る」
「……そっか」
私は思い出したように鞄の中をごそごそと漁り、一枚のクッキーを取り出した。
「シャン、これあげる! マノノのために作ってもらったクッキーなんだ。マノノの好きな木の実の入ったクッキーなの。シャンに食べてほしくって」
私がそう言うと、シャンは目を丸くしてぱたぱたと羽根を動かしている。
「いいのか? 木の実はマノノの好物だろ?」
シャンと会話している時にレノンが聖樹の下にいるのが見えた。
そろそろ戻る時間。
「いいのっ。シャンに食べてもらいたくって持ってきたの。あっ、そろそろ行かなきゃ。じゃ、またね!」
「マノノ、ありがとう」
「シャン、まったね!」
私は急いでレノンのポケットにもぐりこんだ。
「マノノ様、お帰りなさい」
レノンはどこかホッとしている様子に見えた。
「ただいまー」
「もう良かったんですか?」
「うん。大丈夫だよ! レノンは聖樹に何をお願いしたの?」
「私はマノノ様が我が家に来てくれたことの感謝をしました」
「そっか」
「人々の願いは届くものなのですか?」
「うーん。どうだろうね? この日はみんなの願いは丸い光の玉になって浮かび上がってくるんだけど、私たちはその願いを捕まえて聖樹の中に入れていくの。
そしたらね、聖樹は実を付けるの。実はみんなに配られているでしょう?」
「そうですね。冬の始まりの日に聖樹の実は乾燥させてマフィンの中にドライフルーツとして入っていて神殿から配られていますね」
「うん。聖樹の元気をみんなにわけているの」
「ではそのマフィンは食べた方がいいんですね」
「うん。そうだよー。神殿にくる人は少ないけど、ちゃんと食べた方がいいの」
年々、神殿が配るマフィンを食べる人は減っているけれど、それはしかたがないよね。でも食べた方がみんな元気になるのにもったいない。
「ねね、レノン。お祈りも終わったし、美味しいもの食べようよ!」
「そうですね。さっき肉を焼いていた店に行きますか?」
「うん!」
レノンと私は神殿を出て少し歩いたところにある露店へ向かった。
「兄ちゃん、美味いよ! どうだい?」
「一つ下さい。あと、妖精用も」
「あいよ!」
鉄板で焼いた肉を丸いパンの中に入れて半分に折ったものと、同じものでも一口サイズの小さなものをレノンは受け取った。
今日のこの日だけは妖精用の小さな物が用意されている。
これはここの店だけじゃなくて他の店もそう。昔からの風習みたい。
今は妖精を見る人は少ないけど、昔はたくさんいたからその名残なのかもしれない。
「隣の店の果実水も飲みますか?」
「うん。ここの果実水はこの間の果物と違うんだね!」
「この果物は酸味と甘みのバランスがいいので飲みやすいと思いますよ」
レノンは果実水とパンを持って歩き始めた。
「歩いては食べられないのであっちの広場にいきますか」
「うん!」
私たちは広場に設置されている椅子に座り、先ほど買った物を食べ始めた。
広場は円形で椅子がたくさん並べられているのだが、前の方はステージになっていて今は音楽に合わせて演舞を踊っている人が見える。
「凄いね、あの踊り子さん、妖精と一緒に踊ってる」
「そうなんですか?」
「うん。あの人はきっと踊りが上手くなるようにお祈りしたんじゃないかな」
「マノノ様以外の妖精は見れないんですね」
「たぶん?」
「妖精が見れる人と見れない人の違いってなんでしょうね」
「うーん。場合によってとか、妖精が付いた者とその近親者とか、妖精自身が姿を見せるかどうかもあるし、わかんなーい」
「妖精が付いた者?」
「うん。あっ、レノン。踊りが終わって歌が始まったよっ!」
私は食べ終わり、レノンの頭の上にちょこんと乗って歌を聞く。
初めてのことばかりでわくわくが止まらない。
「とってもいい曲だね」
「……そうですね」
それから二曲ほど聞いた後、私たちは家に戻った。
久々に聖樹に戻ったし、美味しいものも広場で行われていた歌や踊りも見てとっても楽しかったの。
また行ってみたいな。
レノンも人ごみで疲れたのか今日はすぐに眠ってしまった。




