15 シャンの心配
「マノノー!」
「シャン!」
心地よい風と共に窓から現れたのはシャンだった。
「マノノ! 大丈夫か!?」
シャンは私の傍に来てほっぺに触れ、頭を撫でてあちこち調べている。
「シャン、みんなのおかげで元気になったの」
「よかった。みんな心配していたんだぞ。俺だってどんなに心配したことか……」
そう言ってシャンは目に涙を溜めながら私をしんぱいしてくれていた。
「シャン、心配かけてごめんね。マノノはもう大丈夫だから。ほらっ、シャンも座って」
シャンは私が元気な姿を確認してようやく安心したみたい。
私に手を引かれてようやくソファに座った。
「神官さんから聞いた時、俺、心配ですぐに行こうとしてたんだけどさ。そういう時に限って鳥が邪魔してきたんだよな」
「あの鳩さんたティーラの鳩さんたちって不思議な存在だよね。きっと何かシャンに伝えたかったのかも?」
「どうだろうな? で、マノノ、そろそろ無くなる頃だと思ってこれを持ってきたぜ」
シャンはそう言って木で作られた水筒を渡してきた。
私たち妖精が使っているこの木の水筒は聖樹の木で作られた特別なものでこの中にお水を入れると、聖樹の朝露のように飲むだけで聖樹の力をほんの少しだけもらえるの。
「中には朝露が入っている。そろそろ神官が持ってきた小瓶の中身がなくなるだろうとおもって」
「嬉しい! シャン、ありがとう!」
私が大喜びでシャンから水筒を受け取ると、シャンは頬が赤くなり、羽根をぱたぱたと動かしている。
「マノノ、それよりお前、大丈夫か? 力は足りているのか?」
「うん。今のところ大丈夫。ちゃんとレノンも私を見てくれているし、みんな優しいの。マノノ、レノンのことちゃんと見てあげないといけない」
「……そうか。だが人間は俺たちのことをすぐ忘れる。マノノ、俺はマノノが心配なんだ」
「大丈夫だって。シャンは心配しすぎだよっ。何かあればすぐにシャンを呼ぶから!」
「ああ、絶対だぞ?」
シャンはそう言うと、飛び上がった。
「あれ? シャン、もう行くの?」
「ああ。俺はただのお使いだからな。今度人間たちは聖樹の祝いをやるんだろう? それの準備もあるからな」
「そっか。もうそんな時期なんだね」
「マノノの顔を見れたし、じゃあな!」
「シャン! ありがとうっ! まったね!」
私は部屋を後にするシャンに大声で手を振りながら彼を見送った。
「シャン、行っちゃった……」
私はシャンがくれた水筒からコップに聖樹の朝露を注ぎ淹れる。
きっとシャンは朝早くから一人で朝露を汲んでくれたのね。
コクリと朝露を一口飲んだ後、私は鈴を取り出し、踊り始めた。
「くるり、くるり、軽やかな風よ吹け、シャンのもとに届けてちょうだい。感謝の気持ちを。そして祝福を。くるり、くるりと優しく風よ、舞え。聖樹よ、私の願いを聞き入れ給え」
すると心地よい風が吹き、私の髪を撫でた。
シャンが無事に聖樹に戻れますように。
窓からは優しい光が射しこんでいる。
このまま素晴らしい日が続きますように。
踊りを終えた私はまた味を確かめるようにゆっくりと朝露を味わった。




