14 母の治療2 マノノへの気遣い
それから私は数日間レノンの部屋で聖樹の朝露を飲みながら体を回復させていった。
「マノノ、完全復活っ! もう大丈夫!」
羽根の先まで艶が戻り元気いっぱいに宙を飛んでレノンにアピールする。
レノンはその姿をみて笑顔になった。
「レノン、そろそろレノンのお母さんの治療をしに行こう」
「わかりました。母もマノノ様に会いたくて何度も私にマノノ様の様子を聞いてきたんですよ。マノノ様の姿を見たら喜ぶと思います」
「うん」
私はレノンの肩に飛び乗り、レノンのお母さんの部屋へと向かった。
「母さん、入るよ」
レノンはそう言って部屋に入った。
今日はレノンのお母さんはソファに座り、レースを編んでいる。
「レノンもマノノ様もいらっしゃい。マノノ様、もう体調はよろしいのですか?」
レノンのお母さんは手を止め、私を心配するように聞いてきた。
「うんっ! もうすっかり元気になったよ。今日はレノンのお母さんの病気を治しに来たの」
「ありがとうございます」
「レノンのお母さん、ベッドに寝てちょうだい」
「わかりました」
レノンのお母さんはベッドへ行き、レノンはベッド横にある椅子に座っている。
部屋の入り口にはレノンのお母さんのお世話をしている侍女さんが静かに立って様子を窺っている様子。
「じゃあ、準備するね。レノン窓を開けてちょうだい」
「わかりました」
私はそう言いながら鈴を取り出してふわりとレノンのお母さんの胸の上に降り立った。
レノンは私の指示に従うように立ち上がり、窓を開けた後、また椅子に座る。
「くるり、くるり、あしきもの、かろやかなおどりとともにうきあがれ、くるり、くるり。マノノのこえがきこえたら、かろやかなかぜがかげをはこびさる、くるり、くるりとおどれ、まわれ」
私が踊り始めると、前回同様黒い靄が浮かび上がってくる。靄の量を考えても病気が治るにはまだ時間が掛かるだろう。
私は踊りを終えてレノンの手の中に飛び乗った。
「レノンのお母さん、調子はどう?」
「マノノ様、随分と体が軽くなりました」
「よかった」
「母さん、さっきより顔色が良くなっている」
「ふふっ。体中が温かくて、身体が軽いわ。今にも踊り出したい気分よ」
「母さんが元気になるのは嬉しいけれど、無理はしない方がいいよ」
「そうね。せっかくマノノ様が治してくださったんだもの。無理はしちゃいけないわね。マノノ様、お茶を飲んでいきませんか?」
「うんっ。いいよ」
レノンのお母さんはゆっくりベッドから起き上がり、ソファへと座り、侍女にお茶を淹れるように頼んでいる。
レノンは向かいに座り、私はテーブルの上に用意された小さな椅子にちょこんと座った。
どうやらレノンのお母さんが前もって用意してくれていたみたい。
「マノノ様、蜂蜜は入れますか?」
「うんっ。私は甘いのが好きなの」
侍女さんは私の姿が見えていないため、レノンのお母さんが代わりに聞いて蜂蜜を入れてくれている。
「お口に合うといいのですが」
私は小さなカップに入ったお茶を飲んでみた。
ふわりと湯気が前髪をくすぐっていく。
「甘くて美味しいっ。マノノ、これ好き!」
「良かった。マノノ様のために選んだお茶なんです」
「そうなの? レノンのお母さん、ありがとう」
「マノノ様は聖樹の妖精だと聞いたのですが、マノノ様の他にも妖精はいるのかしら?」
「うん、たくさんいるよ。マノノ、住んでた聖樹にはいーっぱいいるよ。他にもお花がたくさん咲いているところとか、森にもいるんだよ」
「どんな妖精なのかしら?」
「どんな? うーん。マノノみたいにピンク色だったり、緑だったり、青とか水色とか色とりどりの妖精かな。マノノみたいに踊りが好きな子もいるし、笛や太鼓とか楽器を弾く妖精もいるよー」
「なんだか賑やかで楽しそうそうね」
「うんっ。毎日楽しいよ」
「マノノ様は聖樹に戻りたいと思っているんですか?」
「んー? マノノはレノンの願いを叶えるためにここに来たもん。レノンと一緒にいるよ」
レノンとこれからもずっと一緒にいたいと思っている。
でも突然聖樹は私に戻ってこいっていうかもしれない。この先がどうなるかはわからないけど、私は一秒でも長くこのままレノンの傍にいたいかな。
私はふわりと浮いてレノンの肩へ乗った。
「マノノはまだ病気を治すことは半人前だから何度も踊らないといけないの。この先もレノンのそばにいるの」
「マノノ様は私たちにとって素晴らしい妖精です」
「えっへん! マノノ、素晴らしいっ!」
私はぱたぱたと羽根を振るわせた。
そうしてレノンのお母さんの部屋から戻り、レノンは剣を習うために中庭へ、私はのんびりと部屋でお日様の光を浴びていた。




