13 神官さんが来てくれた
「マノノ様、お久しぶりです」
私は目を覚ました時、心配そうな顔をしたレノンと神官さんが目の前にいた。
「神官さん! 久しぶりだね。今日はどうしたの? ゴホッゴホッ」
私は咳をしながら神官さんに挨拶をする。
すると、神官さんは真顔で私を観察するようにじっくりと見て、いくつかの質問をやりとりした後、『やはり』と言葉を漏らしている。
「神官様、マノノ様の病気は重篤なものなのですか?」
レノンが心配そうに聞いている。
「いえ、マノノ様は今まで聖樹から離れたことがありません。ここでの生活は初めてのことばかりで身体が驚いてしまっている状態のようです。子供の知恵熱みたいなものでしょう。しばらく安静にしていれば治りますよ」
「よかった」
レノンは神官さんの話を聞いて胸を撫でおろしている。
「ね? マノノの言った通りでしょう? 寝ていれば治るの」
「……とはいえ、マノノ様。無理はよくありません。他の妖精たちも心配しておりましたよ」
「うん、ごめんね。今度からちゃんと休むようにするね」
「マノノ様、聖樹の妖精たちからマノノ様の病気が良くなるようにとこれを預かってきました」
神官さんは鞄から小瓶に入った液体を差し出した。
人間たちからはただの水のような液体に見えるけれど、私たち妖精にとっては淡い光を含んだ液体だ。
「神官さん、聖樹の朝露をありがとう!」
「マノノ様は一目見ただけで聖樹の朝露だとわかるのですね」
「うんっ。もちろんだよ! さっそく飲んでみていい?」
「ええ、もちろん」
私は小瓶を開けようとしたけれど、「私がやりますよ」と代わりにレノンが開けて木のコップに聖樹の朝露を注ぎ、渡してくれた。
聖樹の朝露を口に含むと、甘みがじわりと口の中に広がっていく。
数日ぶりに聖樹の朝露を口にした喜びと聖樹の葉からの栄養が身体に染み渡っていくのがわかる。
「美味しいっ。マノノ、すぐ元気になる」
私の喜ぶ顔を見てレノンも神官さんも笑顔になった。
「よかったです。マノノ様、あまり無理せずたまには聖樹に戻って身体を休めてくださいね」
「うん、わかった。神官さん、ありがとう」
「では、レノン様、私はこれで」
「神官様、わざわざお越しいただきありがとうございました」
神官様はそう言ってクスターさんと一緒にレノンの部屋を後にした。
部屋に残ったレノンは相変わらず心配そうに私を見ていたけれど、私が美味しそうに朝露を飲む姿を見てほっとしたようだ。
「マノノ様、その聖樹の朝露はどんな味がするのですか?」
レノンは興味深そうに聞いてきた。
「これはレノンにとってはただの朝露だよ。ただの水。でもマノノは聖樹から生まれた妖精だから聖樹の元気が溶け込んだこの朝露はとても甘くて元気になる味なの」
私がそう言うと、レノンは不思議そうに小瓶を持って光りに翳してみたりしている。
レノンが口にするかもしれない。
私は慌てて止めに入った。
「レノンは飲んじゃダメだからねっ」
「? もちろんマノノ様の飲み物ですから飲みませんよ?」
私が止めに入るとは思っていなかったようでレノンはふわりと笑い、小瓶を置いた。
「この小瓶はテーブルに置くにはちょっと大きいし、クローゼットの中に入れておきますね」
「うん! ありがとう」
「さっ、もう少し休んで下さい」
「はぁぃ」
私はまたベッドに横になり、眠りについた。




