10マノノ病気になる
「レノン……マノノ、身体がだるくて動けない。ゴホッゴホッ」
「マノノ様っ」
翌朝いつものように目を覚まそうとするけれど、瞼も身体も重い。
おまけに頭もふらふらする。
ベッドから出ようとした時にふらりとよろけたところをレノンに抱きかかえられた。
「大丈夫ですか!? 熱い……。熱があるんじゃないですか? でも、妖精って風邪とか引くのかもわからない。マノノ様、とりあえず医者を呼ぶのでこのままベッドで休んでいてください」
「でも、レノン。今日はレノンのお母さんを治しに行く日だよね? ゴホッゴホッ」
「母の体調は以前より安定しているし、問題ありません。今はマノノ様が元気になることが一番です」
「わかったー」
レノンに触れられていると、怠くて重い身体が少しずつ癒えていくのがわかる。
「レノン、気持ちいい。このまま撫でていてー」
「マノノ様が喜んでくれるなら」
レノンは微笑みながら私を撫でてくれる。うっとりしているうちに、まただんだんと眠くなって、いつの間にか私は眠ってしまっていたみたい。
「……す」
「えっと、私が呼ばれた理由なんですが――」
誰かとレノンが話し声で私は目を覚ました。相変わらず咳はまだ出ているけれど、少し寝て幾分楽になった気がする。
「レノン、その人は誰?」
部屋にはレノンとクスターさんと誰か知らない男の人が立っていた。
「マノノ様、体調はどうですか?」
「あんまり変わらないかな」
「マノノ様の病気を医者に診てもらおうと母の診察をしてから来てもらったんですけど、医者はマノノ様が見えないようで……」
レノンがそう話をしている横で医者は私の方を見ようとしている。でも残念だけど、私とは視線が合わないみたい。
「そっか。レノン、お医者さんを連れてきてくれてありがとう。マノノ大丈夫だからっ。ゴホッゴホッ」
「マノノ様っ!?」
慌てるレノンを横目に医者は困惑している様子だ。
クスターさんは機転を利かせてお医者さんに声を掛けた。
「カイン医師、わざわざお呼びして申し訳ありません。お時間もありますので……」
「あ、ああ。そうだな。妖精を見れると思って来てみたが、残念ながら私には見ることができないようだ。今日は病院に戻りますが、何かあったらいつでも呼んでください。ではレノン様、失礼します」
「カイン先生、ありがとうございました」
レノンはお医者さんを見送った後、心配そうにまた私のベッドへとやってきて私の頭を撫でた。
「レノン、マノノはちょっと疲れただけだから大丈夫。このまま寝ていればそのうち治ると思うの」
「……心配です。マノノ様は今まで病気になったことはあるのですか?」
「ううん。ないよー。でもたまに妖精たちは怪我をしたり、ぐったりしている妖精は見たことあるかな。ゴホッゴホッ」
「そんな時はどうしているんですか?」
「んー。消える」
「えっ? 今、なんて?」
レノンは私の言葉がわからなかったようで手を止め、聞き返してきた。
「消えちゃう」
「え? 消えちゃうとは……? 存在そのものが消えてしまうということでしょうか?」
「うん。怪我が酷い時はね」
怪我や重い病気で回復の見込みがない時は自ら聖樹に戻る。
そして新しい妖精が生まれる。
そこには人間が持つような悲しみはない。
だって聖樹から生まれて聖樹に戻るのは当たり前だから。
私はまだそこまで重いものでもないし、レノンのお母さんを治すっていう目的を果たしていないから聖樹に戻ることはない。
レノンは私の言葉に驚いた後、悲しい表情になった。
「レノン、大丈夫。マノノは消えないよ」
「ですが……」
「大丈夫。マノノ、もう少し寝て、起きたら元気になると思う」
「……わかりました」
私はレノンが不安がらないように笑顔で応えた。
もう少し寝ていれば大丈夫だと思う。
私は回復するためにまた眠りについた。




