第4章・27節『国際捜査機関』
フィハュ゜ーュー・サ゜ニム・ギーフィゾセィ
エーギナ
リャヴ・ケーキュマ
ルーカーギーゾィヴェナー・テュー
ロッギナ
ルフィハュ゜ーュー・サ゜ニム
リア゜ーウ
ルレィゾュー
メリエ
ヨーギャヌ゛
ワャーガ
それは、何処とも知れぬものから流れてきていた。
空気を震わせて来たものではなく、深い場所にわずかに残る旋律に重なり、ただ忘却へと奪われていくもの。
其は問う
穿つ穴より出でる枷は
其を問う
最果てる夢の末路を
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昨日サヘー島庁舎で、緊急に2度目の委員会会議が行われた。グレィマへの定期輸送船が襲撃されたとの通報を受けたためだ。
その後、サヘー島から臨時船が、乗組員と乗客の救助へと駆り出された。乗客の1人が事件をサヘー島に通報するため、チョスポという地下集落へ向かった事は把握されていた。その者がいなければ、事件の発覚と救助には更なる時間がかかっていた事だろう。
委員長のメロウティア・タカイドと秘書マエルーは、治安維持部隊の隊員と共に、ゴンゾー港に着いた乗組員達から調書を取った。時刻はすでに深夜の1時を過ぎていた。
乗組員達は麻酔弾を喰らった影響で早々に気を失っており、襲撃時の状況をまともに覚えていなかった。乗客も生まれて初めての体験におびえ、ろくに話ができなかった。海賊が古い文献の中だけの存在であったため、無理もない話だ。
薄手の服ではまだ寒く感じる夜気が、港からの風を受けてさらに冷える。眠そうな目をしたマエルーは、予想通りまともに寝る時間はなくなりそうだと考えた。
襲撃された輸送船の操舵室は、ひどく破壊されていた。修理がすむまでは、救助に使用した臨時船を定期輸送に回す必要がある。臨時船は古い輸送船を再利用していたのだが、背に腹は代えられない。
「至急、臨時船を補強して」
乗客に寝る場所を手配し、メロウティアが指示を出した。
人口が半分になったキーイーらィの呪いで、サヘロディは追放されたと歴史には記録されている。しかし、サヘロディが作り出したと考えられている物は、今なお人の生活に深く入り込んでいた。
古き時代の人々が元いた星、ベュー・ルガテカーでは、小さな恒星とも呼べる核融合で、莫大な電力が生み出されていたと言う。燃える水や氷も無いアーサニカーで、それを利用したがった人々は、サヘロディに代わりとなる物を望んだ。
そしてサヘロディは、チァーラの木を人々に与えたと伝えられている。
グレィマ島の南に位置する都市フジシマ。セルデンサローが建国されてから25年後に作られた、グレィマの首都にあたる街だ。
キーイーらィの呪い以前に、ツキミ・フジシマがサヘロディから教えられた言葉。それを元に、国の名が決められていた。
【悪しきものを超える命】
それがグレィマの意味だと言う。
繭は先にグレィマへ送られていたが、分析結果がメロウティアの期待した日付に届くことはなかった。
グレィマ島とサヘー島、そしてセルデン島間の緊急連絡は、ラジオの暗号化された専用周波数を用いていた。海底に棲息している生物が、電話線を食いちぎるため、いまだに不便な連絡手段が利用されていた。
緊急の要件として認められなければ、あるいは公的に受信される事を良しとしない内容であるならば、ポルポ便の信書を使うか、物理的に移動して直接伝えるほかない。
新たな事件がチァーラの実95箱分の窃盗ともなれば、コワト村にあった得体の知れぬ繭など、すぐに重要視されなくなるだろう。
この星に刻まれた人類の歴史は、まだ412年分しかなかった。人類は近隣の海域から外に出る力がなく、その限られた圏内でさえ、全ての生物を把握しているわけではなかった。
チァーラの実に関する事件は、基本的にサヘー保護委員会とサヘー治安維持部隊の管轄下にあった。しかし、今回はサヘー島の外で定期輸送船が襲撃され、結果的に大規模な窃盗事件となった。
そのため、国際捜査機関が捜査の指揮を執ることになる。
サヘー島担当指揮官は、現サヘー保護委員相談役である、ヨシタカ・タカイドだ。ちょうど通夜祭でグレィマにいたヨシタカは、祭儀の途中で臨時招集を受け、フジシマにある本部で緊急会議に出席した。
その時はまだ、事件がさらに大きくなるとは、誰にも予想できなかった。
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前触れもなく何かが体に触り、カズラは冷や水を浴びたように目を覚ました。
「あ……悪い。トイレに行きたいから通してくれ」
カズラの前に立っていたラグが、申し訳なさそうな顔で頭を下げる。
カズラが扉をふさぐ形で座っていたため、開けられずに困っていたのだ。体を起こそうとして、カズラは自分に絡みついた物体に気づき、瞳孔を丸く広げた。
カズラの腰に抱き着く形で眠っていたのは、丸まったカーネルシアだった。
「ルク・ミィア……は帰ったのか?」
ラグが暗く狭い部屋を見てつぶやく。声の調子から、どうやら熱は下がった様だ。
カズラはカーネルシアを起こさないように、扉の前からゆっくり体をずらした。
「さあな。俺には関係ない」
カーネルシアの頭を見下ろしながら、カズラのしっぽが何気なくカーネルシアに寄り添う。
ラグが廊下への扉を引いた途端、外側から足元にルク・ミィアが倒れてきた。部屋の扉にもたれて眠っていたらしい。
「!?」
「おや……体調はもういいんですか? ラグさん」
眠そうに目をこすり、ルク・ミィアが気怠そうに反応した。
「お前、まだいたのか」
カズラがルク・ミィアの声を聞きつけ、扉の裏から引きつった顔を出す。
「いて悪いんですか?」
飄々と言いながら、ルク・ミィアは手首に巻かれていた黒い腕時計を見た。
朝の光など、どこからも差し込まない地下だったが、そろそろ空が明るくなる時刻だった。




