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木漏れ日と君のカーネル  作者: 墨鎧可倉
第2章

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16/30

第2章・16節『サヘロディ』

 治安維持部隊はゴンゾー街で不審者達に続き、穴に逃げたカズラをどう(あつか)うだろうか。カズラが不審者をコワト村に手引きし、チァーラの実を盗む手はずを整えた内通者だと考えると、一連の筋が通る。

 正体の知れないカーネルシアを、放火と窃盗があった夜に、村へ連れて行ったのもカズラだ。


 果たして、今さら治安維持部隊に身の潔白を(うった)えたところで、信じてもらえるだろうか。村の中には、カズラがそんな事をするような者ではないと、弁護してくれる者はいないように思えた。

 むしろ、他の村人に(うら)みが(つの)っていたのではないかと、証言する者のほうが確実にいるとさえ思える。


 状況は最悪だった。


「カズラ、大丈夫だ。何も心配しなくていい」

 またもやカーネルシアが、状況をのみ込めていないように楽観的な事を言う。

「どこが大丈夫だ」

 カズラは不貞腐れたようにこぼしたが、カーネルシアに敵意を向ける気にはなれなかった。


 村で出荷箱の下に穴が開いていたのをカズラに教えている事や、不審者達の態度。それを考えると、カーネルシアもカズラと同じように、巻き込まれただけの不運な人間なのだろう。しかし、治安維持部隊はそうは思わないはずだ。


 身元不明である以上、カズラよりも(はる)かにカーネルシアが置かれた状況は悪かった。カズラは不安げにカーネルシアを見ながら、この先どうするか判断に迫られている気がした。


「なぁ、君達も何か事情があるんだろ? お互い犯罪者じゃないなら、しばらく一緒に行動しないか?」

 その唐突なラグの提案を聞き、カズラの耳がぴくりと動いた。


 巻き添えになった者同士ではあるが、これ以上事情が複雑になるのは避けたかった。だが、カズラより先にカーネルシアが答えた。

「ん゛。僕は構わない」

 勝手なカーネルシアに、カズラの片眉がつり上げられる。

「俺達は別行動だ!」

 カズラは心底不快そうな顔をして、カーネルシアの手を取り、通路をずかずかと進んだ。


 しかし、ラグは2人をつけるように後ろを歩いてくる。

「どうしてついてくる! お前は引き返して別の通路を進め!」

 ()みつきそうな勢いで、カズラが声をあげた。カーネルシアは目を丸く見開くと、急に手を伸ばしてカズラの頭をなでた。


「カズラ、ラグを怖がらなくていい」

 何をどう解釈(かいしゃく)すればそうなるのか。カーネルシアに頭をなでられている()然としたカズラを前に、ラグは明らかに笑いをかみ殺している。


「俺もカーネルシア……って呼んでもいいか?」

 ラグがカーネルシアに少し恥ずかしそうに聞く。カズラは拳にぎゅっと力をこめると、ラグを視線で射殺(いころ)すようににらんだ。


 通路は次第に横幅が広くなり、やがてカズラとカーネルシア、ラグが並んで歩けるほどにまでなった。カズラとの間にカーネルシアを(はさ)む形で歩いていたラグだったが、やがて2人に向かって重く口を開いた。

「なぁ、さっきの不審者。あれは本当だと思うか?」


 意味が分からず、カズラがカーネルシア越しで、()しゃ物のようにラグを見る。ラグは少し躊躇(ちゅうちょ)しながらも、そのまま話を続けた。

「穴のそばにいた男を、サヘロディ様と……呼んでいただろ?」


 通路の荒々しい側面が、その名の響きを吸収する。カズラとカーネルシアは、同時にラグへと注意を向けた。

「あの男は本当に」

「そんな訳があるか」

 ラグの言葉をさえぎるように、カズラが乱暴に言い放った。肩をすくめたラグは、決まりの悪そうな顔をした後、再び通路を黙々と歩いた。


 複数の集落で作られた共有地区には、学び()と呼ばれる小規模な教育施設が建てられていた。先人からの教えで、子供への教育は何よりも重視されていた。


 時間が()つにつれ、教育内容には変化があったものの、最初に教えられる事柄は変わらなかった。

 惑星アーサニカー。今から411年前、ここに宇宙から古き時代の人々を連れ、降り立った者がいた。


 人々はその者を、サヘロディと呼んだ。

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