第48話 対決の後
役人が記録を読み上げた。終わりの声だった。
◇
役人が確認事項を読み上げた。記録が完結した。
「以上で終了とします」
声が夜風に乗って、消えた。
アルトは剣を鞘に収めた。
◇
「ありがとうございました」とアルトが言った。
間があった。今日初めて、どちらから言ったらいいかわからない間ではなかった。
「こちらこそ」とソプラノが言った。
またしばらく黙った。
「また来ますか」
「……わかりません」
「俺も、わかりません」
間があった。
「鈴を囮にするとは思いませんでした」
「師匠に習ったことの逆でした」
「逆というのは」
「鳴らさないために付けた鈴を、鳴らして使いました」
ソプラノが少し考えた。
「……なるほど」
「鳴らさなかったのは足音でした。鈴は別に使いました」
「……両方できたんですね」
「今日だけかもしれないです」
「今日だけでも、できました」
それだけだった。
◇
アルトがトネリアのところに行った。
「師匠、見えましたか」
「見えた」
「どうでしたか」
「本物だった」
「……本物でしたか」
「そうだ」
「鈴は、鳴らさないほうがよかったですか」
「いや」
「……そうですか」
アルトが少しの間、剣を握った。何も言わなかった。
◇
帰りの舟が出た。
日が暮れていた。海の色が変わっていた。来るときより深かった。波の音が変わっていた。
アルトは何も言わなかった。
しかしこれは来るときの黙り方と違った。来るときは前を向いた黙り方だった。今は、何かが終わった黙り方だった。
良い方の終わりだった。
◇
その夜、トネリアは舟の中で月だけではなく星を見た。
見ながら考える。
アルトの剣を、ソプラノが今日ちゃんと見た。こなたも見た。役人も記録した。
見てほしい、と言っていた。見てもらえた。
教えていないことを自分で考えて行った。これが「剣を磨く」ということだった。
剣は道具ではなく意志だ。その意志が、今日形を持った。




