表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/55

第45話 夕日


 ソプラノが島の反対側で立っていた。だいぶ待ったように見えた。


 ◇


 アルトが平地に出た。向こうにソプラノがいた。


 ソプラノの表情が、来るなりの表情ではなかった。待って、少し固くなっていた。


「遅かったですね」


「そうですか」


「……わざとですか」


 アルトは答えなかった。


 ◇


 役人が制度上の確認事項を読み上げた。風がその声を少し曲げた。


「登録術師ソプラノ、対、一般人アルト。立会人トネリア——」


 一般人アルト、という言葉が、風の中に混じって消えた。


 弟子ではなかった。一般人として記録される。


 奇妙だった。しかし悪くなかった。剣は剣だ。どう記録されても、剣は変わらない。


 ◇


 トネリアが岩のそばに立った。立会人として、端に立った。


 アルトから見て、師匠が端にいた。師匠の目を見た。目が合った。


 何も言わなかった。


 それで十分だった。


 ◇


 アルトはもう一度、太陽の位置を確かめた。


 西に傾いていた。低くなっていた。今だった。


「準備はいいですか」と役人が言った。


 アルトは動いた。


 返事をしなかった。ソプラノの反対側に回り込んだ。


「何をしていますか」


 答えなかった。立ち止まった。


 太陽を背にして立った。


 光が、その方向から来ていた。ソプラノが目を細めた。


「……なるほど」


 低い声だった。怒った声ではなかった。


 ◇


 剣を抜いた。鈴が一度鳴った。力が入っていた。


 アルトは深呼吸した。


 もう一度構えた。鈴が鳴らなかった。


 これでいい。


 ◇


 その夜、トネリアは岩のそばに立っていた。


 アルトが太陽を背にして立った。


 こなたには教えていない。読むことだ、とこなたは言った。しかしこなたが言ったのは相手のことだった。


 アルトは、場のすべてを読んでいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ