表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/55

第44話 島へ


 舟に乗ったのは初めてだった。


 ◇


 朝早く出た。空が白んでいた。街を抜けて海岸に出た。


 舟があった。小さい渡し船だった。トネリアと役人がすでにそこにいた。


 ソプラノの姿はなかった。


「先に行っています」とトネリアが言った。


「先にですか」


「そうだ」


「……そうですか」


 舟が出た。


 ◇


 海が動いていた。陸が遠くなった。


 アルトは剣を膝に置いて、海を見た。


 揺れていた。足元が一定ではなかった。


 立ってみた。揺れる舟の上で、立った。少し歩いた。鈴が鳴らなかった。


 少し速く歩いた。鳴らなかった。


 誰も見ていなかった。それで十分だった。


 ◇


 島が見えてきた。


 岩が多かった。木が少しあった。砂浜ではなかった。平らな石の地面が沖まで続いていた。


 風があった。海の風だった。一定ではなかった。止まる瞬間があった。


 アルトは太陽の位置を確かめた。


 西に傾いていた。まだ高かった。あと一刻か二刻で低くなる。


「あそこです」と役人が言った。


 ◇


 上陸した。


 石畳のような平地が広がっていた。端は岩場になっていた。海が見えた。


 遮蔽物はほとんどなかった。岩が数個あるだけだった。


 地面を踏んだ。固かった。平らだった。足場は悪くなかった。


「ソプラノは」


「島の反対側で待っています」と役人が言った。


 アルトはもう一度、太陽の位置を確かめた。西に傾いていた。


 計算通りだった。


 ◇


 その夜、トネリアは島の端に立っていた。


 アルトが舟の上で歩いていた。鈴が鳴らなかった。


 こなたには教えていない。自分でやっていた。


 島の石の地面を見た。平らだった。固かった。


 明日ではなく今日だった。今日がその日だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ