表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/55

第40話 姉が約束の形を示した


 夏の終わりに、ソプラノが「答えを持ってきた」と言った。


 ◇


 来るなり言った。今週も来るなりだった。


「先に話したいことがあります」


「わかりました」とアルトが言った。


 三人が縁側に座った。


「いつですか、と聞かれました。答えを考えていました」


「はい」


「秋になったら、一度やりましょう」


「剣と術で」


「そうです。一度だけ向き合います。勝ち負けは、どちらでも構いません」


 アルトが黙った。


「一つだけ聞いていいですか」


「はい」


「なぜ受けてくれるんですか」


 ソプラノが少しの間、庭を見た。


「見たいからです」


「何をですか」


「あなたの剣を。ちゃんと」


 ◇


「場所はどうしますか」とアルトが聞いた。


「沖に小さな島があります。知っていますか」


「知らないです」


「舟で一刻ほどです。人がいません」


「なぜそこですか」


「術を使う場合、周囲への影響を避けたい。役人の立会のためにも、閉じた場所が良いと思って」


「……わかりました」


「行けますか」


「行きます」


 ◇


「負けてもいいですか」


「構いません」


「でも負けたくないです」


「わかっています」


「……見てほしいです」


「見ます」


「ちゃんと」


「ちゃんと」


 二人が同じ言葉を言った。


 トネリアが「そうか」と言った。それだけだった。


 しかし今日の「そうか」は重みが違った。


 ◇


 夕飯を食べた。三人で食べた。


「うまいですか」


「おいしいです」とソプラノが言った。


 今日はアルトも、うまいと言った。すぐに言えた。


 冷やした果物が出た。今日は全員が全部食べた。


 ◇


 その夜、トネリアは縁側に出た。


 約束が形を持った。秋、島で、一度だけ。


 役人が来る。こなたが来る。ソプラノが来る。


 こなたはその場にいるだけだ。しかしいて良かった、と思うだろう。


 今夜はまだ思っていない。秋になったら、思う。


 笛を持った。吹いた。音が外れた。その後は、静けさだけが残った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ