第40話 姉が約束の形を示した
夏の終わりに、ソプラノが「答えを持ってきた」と言った。
◇
来るなり言った。今週も来るなりだった。
「先に話したいことがあります」
「わかりました」とアルトが言った。
三人が縁側に座った。
「いつですか、と聞かれました。答えを考えていました」
「はい」
「秋になったら、一度やりましょう」
「剣と術で」
「そうです。一度だけ向き合います。勝ち負けは、どちらでも構いません」
アルトが黙った。
「一つだけ聞いていいですか」
「はい」
「なぜ受けてくれるんですか」
ソプラノが少しの間、庭を見た。
「見たいからです」
「何をですか」
「あなたの剣を。ちゃんと」
◇
「場所はどうしますか」とアルトが聞いた。
「沖に小さな島があります。知っていますか」
「知らないです」
「舟で一刻ほどです。人がいません」
「なぜそこですか」
「術を使う場合、周囲への影響を避けたい。役人の立会のためにも、閉じた場所が良いと思って」
「……わかりました」
「行けますか」
「行きます」
◇
「負けてもいいですか」
「構いません」
「でも負けたくないです」
「わかっています」
「……見てほしいです」
「見ます」
「ちゃんと」
「ちゃんと」
二人が同じ言葉を言った。
トネリアが「そうか」と言った。それだけだった。
しかし今日の「そうか」は重みが違った。
◇
夕飯を食べた。三人で食べた。
「うまいですか」
「おいしいです」とソプラノが言った。
今日はアルトも、うまいと言った。すぐに言えた。
冷やした果物が出た。今日は全員が全部食べた。
◇
その夜、トネリアは縁側に出た。
約束が形を持った。秋、島で、一度だけ。
役人が来る。こなたが来る。ソプラノが来る。
こなたはその場にいるだけだ。しかしいて良かった、と思うだろう。
今夜はまだ思っていない。秋になったら、思う。
笛を持った。吹いた。音が外れた。その後は、静けさだけが残った。




