第37話 母から手紙が来た
使者が来た。今回はアルト宛てだった。
以前書いた手紙への返事だった。トネリアがアルトに渡した。
アルトは部屋に入った。しばらく出てこなかった。
夕飯のとき、目が少し赤かった。
◇
「師匠、手紙が来ました」
「そうか」
「母から」
「そうか」
「……謝っていました」
「そうか」
「理由も書いていました」
「そうか」
「聞きますか」
「さあ」
「聞いてください」
「……言え」
「もし負けなければ、殿下の剣術師範になり、地位とお金を手に入れることができた。それでもう一度、俺や姉と一緒に暮らしたかったと。でも負けた。だからごめんなさいと書いてありました」
しばらく黙った。
「……そうか」
「師匠、馬鹿だと思いますか、母を」
長い間があった。
「思わない」
「なぜですか」
「そういうことをするのが人間だからだ」
アルトは芋を食べた。今日は芋がうまかった。
◇
夕飯が終わって、縁側に出た。
今日はソプラノも来ていた。三人で縁側に座った。
遠くから太鼓の音がした。
祭りだった。
三人とも、しばらく黙って聞いていた。誰も行かなかった。
「師匠、祭りに行かないですか」
「今日はいい」
「俺もいいです」
「わたしも」とソプラノが言った。
太鼓の音だけが続いた。夏の虫の音と混じった。遠かった。賑やかだった。
縁側はしずかだった。
三人で、黙って聞いた。それだけだった。
◇
その夜、トネリアは縁側に一人で出た。
祭りの音はもう聞こえなかった。
笛を持った。ウィロウの手紙のことを考えていた。
吹いた。外れた。また吹いた。また外れた。
三度目に、一音だけ合った。
一音だけだった。何もしていなかった。ただ吹いたら合った。
四度目には外れた。しかし今夜は、それだけで十分だった。




