表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
telracStream  作者: 筬群万旗
夢の底に届く光
77/77

仲間

 二人が敬礼で返すのを見届けるなり、岩澄は大股で倉庫を出ていってしまった。風音は一瞬追いかけようとしてから、思いとどまる。

「玄谷!」

 風音は幾起に歩み寄り、耳元でそっと囁いた。

「はあ?なんだって、そんな――」

 仕方なく事情を話すと、始めは訝しがっていた幾起も遠慮なく笑いだした。

「ひっでぇ、果奈にやらせっぱなしにするからそうなるんだ。」

「仕方ないだろう、私がやろうとすると何でもすぐに取り上げられてしまうんだ。」

 気色ばんだ風音を片手で制して、幾起は呼吸を整えてから、

「簡単さ。石を左に握って、カネを右に持つ。で、手前から奥に向かってカネで石を削るように打ちつける。火の粉が飛ぶから、それを綿にかけてついた火に息を吹き込む。」

「分かった。左に持った石の角にカネを打ち付け、綿に火の子をふりかける。いいか?」

「そうそう。それから、付け木に火を移して、薪に持っていくんだ。薪の上にも、ちり紙とかを乗せてさ。」

 風音は目をつむって額に手を当て、何度か小声で繰り返した。一通りの確認が終わると顔を上げ、幾起きに向き直る。

「助かった。恩に着る。」

 幾起の腹の底から、笑いが寄せ返した。

「どういたしまして――上手くやれよ。」

「お前に言われるほどには困ってない。」

 憮然とする風音の肩を叩いて、幾起は風音を送り出す。光の帯を背負った幾起は、白い歯を見せて悪戯っぽく笑っていた。確かめて、風音は再び歩き出す。

「不知火!」

 立ち止まった風音に、幾起は高らかに宣言した。

「覚えておけよ!お前を墜とせるのは俺だけだ!」

「くどい!」

 よくもこんな恥ずかしい文句を臆面もなく言えるものだ。聞き飽きた台詞に方をすくめて見せ、勝手口のへりに手をかけたその時、淀んだ風を割れ鐘の声が吹き飛ばした。

「俺を墜とせるのはお前だけだ!いいな!」

 弾かれたように振り返ると、幾起の人影がはっきりと見えた。積み重なった薄闇を貫き、炯々とした視線がぶつかりあう。気が付くより先に、風音はありったけの声で叫んでいた。

「大口を叩いたからには、滅多な敵に墜とされるなよ!」

 目がくらむほど強い光が、鼓動に乗って埃っぽい暗がりを追い払う。確かな手ごたえを握り締めた拳を、二人は負けじと高く掲げた。

 役目を終えて戻ってくる竜たちと入れ替わりで、二匹の竜が基地の裏手からそっと飛び立つ。涼しさを編み込んだ力強い風に乗って、二つの影が大空に吸い込まれていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ