戦利品
幾起は風音達の往路を辿るようにして倉庫群に向かった。知人の安否が気になるらしく、岩澄はしきりに部隊の様子を訊ねている。風音はしばらく二人の話に聞き耳を立てていたが、人気のない区画に出たのを見計らって早足で幾起に追いつき、耳元で囁いた。
「玄谷、お前が置いてきぼりをくらっている間に、戦果をあげてきてやったぞ。」
ほくそ笑んで振り返るのを待っていた風音に幾起が返したのは、意外なほど不敵な笑みだった。
「置いてきぼりを食らったわけじゃないぜ。実は戦利品もあるんだ。」
「本当かどうか、怪しいものだ。」
開真名が敵だというのに、一体何をせしめたというのか。風音は眉を寄せたが、幾起は鼻で笑って、広場に向かう道に入った。
「いいさ。見せてやるよ。こっちだ!」
「仕事を忘れるなよ。」
あきれ顔の岩澄が、駆けだした二人を追いかける。
幾起が立ち止まったのは、倉庫の裏手に設けられた勝手口の前だった。得意げな顔で振り返る幾起を、鋭い眼差しが捉える。
「大口をたたいたからには、さぞかし面白いものを見せてくれるんだろうな。」
険しい表情で睨みつけられているにも関わらず、幾起は含みのある笑みを保ったまま、真鍮の取っ手を軽く握って、ゆっくりと扉を開け、手招きしながら薄闇の中へ潜ってゆく。幾起に続いて風音が扉をくぐったそのとき、錆の匂いに混ざった底冷えのする香りが、凍った手足にしみ込んできた。
「不知火?」
近くでいきなり幾起の声がした。とっさに振り向くと、怪訝そうな顔をする幾起の肩越しに、倉庫に積み重なった厚い滓を刺し貫く光の帯が、埃を被っていないまたらしい幌を浮き上がらせているのが見えた。大きな板状のものに、革帯で巻きつけてあるようだ。




