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夜風
報告をまとめ上げ、横になった風音は、さえた目でじっと薄闇を見つめていた。宿合がよりにもよって、千波をあてにしたために、いらぬ気を遣うことになった。身の丈に合わないもてなしから解放されてしばらく部屋で寛いだというのに、背筋は固くなったままだ。
諦めて起き上がると、わずかに差し込む光を頼りに、窓に近づく。そろそろ、月が満ちる頃だ。手探りで鍵を開け、ひと筋伸びた青い輝きを、両手で優しく押し開いた。柔らかな月の光は広い部屋をゆっくりと満たし、伸びあがった風音は、おおきく夜風を吸いこんだ。
椅子を窓辺に寄せて、風音はしばらく白い月を眺めていたが、長くは続かなかった。控え目なノックの音が、押し寄せる眠気とともに、青白い静けさをさらってしまったのだ。




