反撃
時間をかせぎながら、凍りついた頭を動かす。上空からの攻撃は、こちらの居場所を知っていればこそ。互いを見失った今、上空からの攻撃はありえない。裏を返せば、こちらの居場所が分かれば、上昇してくれるということである。手近な壁に取り付いて、水路の突き当りを狙った。海を震わせる咆哮を上げて、巨大な水塊が浮かび上がった。
待たずして、敵に動きがあった。味方が撃墜された地点を目指して、二つの影が舞い上がる。攻めに転じた一瞬の隙を、風音の眼は見逃さなかった。狙い澄ました「崇辣」は、硝子の塊を溶断する。思惑どおり、もう一匹は亜邦を追ってきた。
「崇辣」に余力をつぎ込んで通灯を使えない亜邦に、最後の一匹はあっという間に追いついてきた。目に入った角に次々に侵入して、突きつけられた敵意をかわす。じりじりと狭まる距離に、風音は賭けを迫られた。逃げることも、撃つこともできないならば、残っているは肉弾戦のみ。玄谷相手に鍛えた肉弾戦、相手を凌げる自信があった。怪音を背後にとらえると、ひときわ細い角を抜けたところで、風音は勝負に出た。
『そこだ!』
角を抜けると同時に、亜邦の巨体を引き起こす。引きずる尾がはねた飛沫が、残った間合いを一気に埋めた。阿那は絶妙のタイミングで浮かび上がり、相手の真上に張り付く。刷り込まれた動きは、機械のように相手を捕らえた。曲がった爪をつき立て、相手の動きを抑えたまま、狭い水路を突き進む。石造りの橋が視界に入ってきた時には、通灯が使えるようになっていた。作り物の華美な鳥は、苔むす橋げたに打ちすえられ、粉々に砕け散る。水底に沈んだ破片が、太陽を抱いて水面を彩った。




