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森の屋敷
いをりに追いつくと、鬱蒼とした森の中に大きな屋根が見えた。無論、市街ほどではないが、予想よりははるかに立派だ。
「本当だったんだな。」風音は感嘆の声を上げた。
「本当……って、何があると思ってたん」
「そういうわけではなくて、その、砂地が、その……」
訝しげな瞳に覗きこまれ、答えにつまった。
「地の果てまで続いているものだと」
いをりがけらけらと笑いだしたので、身構えていた風音は拍子抜けしてしまった。
「何、それ。海辺だけやって、そんなん。砂丘、ゆうてな……」
「下界の地理など、習わなかったぞ、私は」
もう少し『地上の記述』を詳しく読むべきだったろうか。断片しか思い出せない。風音の言い訳をよそに、いをりは砂丘を下りだした。この小憎らしい小娘は、まだ苦しそうにしている。
家々は、どれも木製で、大きな屋根は、籠用のヤシの葉で葺いてあった。貧弱な壁の間には簾があてがってあるというのも本当だ。二人が村の中心に着いたころには、無遠慮な視線が、床下の柱の陰からのびてくる。本当に、不溜人は礼儀というものを知らない。




