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目覚める傷痕
やっとのことで収拾がついた頃には、東の空がしらんできていた。ざわめきをかかえた競技場が遠ざかってゆく中、重い目をこすって水平線を見守る。空と雲海を切り分けた白が、じわじわと一点に集まってゆく。
「開・真名か……私は、何を期待してる」
白い息とともに吐き出した風音の言葉を、私はしっかりと胸に刻み込んだ。空の中心から流れ出す山吹が、真鍮の手すりを握る白い指を温め、目覚めた街をなめ上げてゆく。縮まってゆく影と、赤く染まる白煙。残された大きな爪跡が、生々しく朝日の中に広げられた。
身勝手な願いが、許されてよいのか。風音は知らないまま、暁に目を伏せる。乾いた風の吹きすさぶ中、老婆の言葉は宙に浮かんだまま、夜明けとともに流されていった。
ただ、呻きをあげる傷痕だけが、一つの時代が終わったことを知らせていた。




