疑念
『密集隊形を組んでいたからだ。考えなくても分かることだろう!』
通りの突き当りに、墓地が見えた。把華達の姿はない。
『馬鹿言え、それだけであんなに差が出るもんか』
墓地は斜面の上にあり、足場までの距離感がつかみにくい。速度を落として、慎重に近づく。
『黙れ。気が散る』
赤土に足を伸ばすが、焦りがタイミングを狂わせた。勢いあまって、そのまま2,3歩音頭を踏む。続けて、唯祈と居虎が降りてきた。
『どうなってる?』
振り返って街を望むと、次第に状況が呑み込めてきた。洛澄本部と陀求社を中心に、激しい戦闘が続いている。洛澄本部のある東側は、方々で火の手が上がって虫食い状態になっていた。通りが一本一本確認できるほどだ。
『……予想以上にひどいな』
『うん、本部は盛り返してるけど、陀求社の方は押されてる。いくらか回せればいいんだけど』
風音は、何気なく通ってきた道筋を眺めた。炎に浮かび上がる二つの区画とは対照的に、切り取られたように暗く沈んでいる。風音は、何を思ったか、唐突に切り出した。
『玄谷、お前、どの道を通ってきた』
『のんきなもんだな……お前と別れてからは、靴屋のある角で曲がって、それから広場で左折して……』
風音よりも細い道を選び、複雑な道を辿っている。間違いない。
『それでも連中は追いついてきた。そうだな』
『……悪かったな。でもあの速さじゃ――』
風音は、得意げに幾起を遮った。
『玄谷、なぜ私が市街に逃げ込んだのか、分かるか』
『そりゃ、俺達の方が地理に明るいからだろう』
『実は、もう一つ有利な点があった、いや、あると思っていた――速さだ』
風音は、居虎を追う目標の姿を見ていた。同じ速さならば、引き離せる自信があった。
『それが証拠に、あの時は距離をあけることができた』
幾起にはすぐには答えが出てこなかった。口に出すのを躊躇っているのだろう。事態はより深刻なのだ。
『幾起、風音。何だか、街の上に靄がかかってない?ほら、あそこ』
一人で街を観察していた果奈が、声を上げた。腰を折られて、果奈の指の先を見るが、それらしきものは見当たらない。
『上昇気流ができているはずだ。靄がたまるわけがない。何かの見間違いだろう』
居虎が亜邦に向き直る。幾起にも、風音と同じ結論が出たらしい。
『来た!』
また果奈だ。何度邪魔をすれば気が済むのか。言い返そうと振り返った視線の先に、把華の影が浮かび上がる。逞しい翼で、荒れた風を掴み、それと分かる勢いで近づいてきた。
『全員揃っているな。分かったことは』




