2/77
漂着
「あんた、どこら流されてきたん?海、珍しいん?」
強い訛りで、覗き込んでくる。眩しさに慣れてくるうちに、記憶も次第にはっきりしてきた。あのときから、進歩がないとは、情けない。
「火の、富良樹から。私は……お前が拾ってくれたのか?」
振り向きもせず、呟いた。
「わしや、わし」女の子の代わりに答えたのは、日に焼けた、大柄な男だった。風音よりは2、3年上の、この子の兄だろうか。
「世話になったな」と独り言を言い、何かを探しているかのように、再び目を海に泳がせる。
しばらくしてから、風音ははっとして振り向いて、「亜邦を見なかったか。私の龍だ。」と尋ねたが、突然の質問に、二人はあいまいな表情で首を振っただけだった。
一瞬の間をおいて、兄の方が手招きした。「ついてこい」砂浜を歩きだす。向かう先に、ちらほらとみすぼらしい小屋が散らばっているのが見えた。焼けるような砂の上に、三列の足跡がのびていく。
何でも、事の次第を長老に報告しなくてはいけないらしい。ずっと、そうして守ってきた、小さい村なのだと、妹は言い訳するかのように付け加えた。誰かが亜邦を見つけていたなら、そちらに伝わっている可能性も高い。風音とて異論はなかった。もとより、不溜人に信頼してほしいとも思わない。




