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telracStream  作者: 筬群万旗
水の天蓋
1/77

プロローグ

            10/1 15:21  雨・交差点

 

飛沫をあげたローファーで、アスファルトを蹴りつづけた。


次第に強くなる雨音が、大きな足音を呑みこんでいく。


崩れた髪を払いのけると、瞬く青が目に入る。


「ダメだ、行ってしまう」私は光を追いかけた。


白い梯子は短いけれど、岸はあまりに果てしない。


消え入る青に、続く赤。雨に滲んで広がってゆく。


凍った雨の交差点を、鋭い悲鳴が引き裂いたとき


          

世界が光に沈んでゆく







 波の音に目を覚ますと、風音は即座に飛び起きた。板張りの粗末な壁を探って、平らな所に耳をあてる。砂が擦れ合うような規則的な音に、足音が混じっている。じっくり構える猶予もない。薄闇に眼を凝らすと、屋根の隙間から差し込む光をうけて、金属が輝くのが見えた。手に取ってみると、短い槍のようだった。已然石があればとも思うが、それはどうやら贅沢らしい。

 生臭いがらくたばかりで目ぼしいものが見当たらず、諦めて扉に向かう。音を立てずに扉の隣に張り付いて、息を殺す。さっきの足音が、近付いてくる。扉の前でぱたりと止んだ。つかんだ槍を、握りなおす。扉が軋んだ音を立てたとき、風音は槍を突き付けた。



 大きな悲鳴に驚いて、思わず槍を突き出しそうになった。不溜人(ブーア)の、子供だ。へたり込んだ女の子の引き上げると、眩しさに目がくらんだ。白い砂が、一面にひろがり、制服の長靴ほどもある波に洗われている。空よりも深い青が、世界の果てまで続いている。雲は、ゆっくりと頭上を流れている。見たことのない景色に圧倒され、唇を溜息が抜けていく。見慣れているはずのものばかりなのに、自分の目が信じられない。まるで、果奈が借りてきた『地上の記述』の世界だ。

「ここは・・・」

「か、関郷島や」不意の答えに、風音はただ頷くばかりだ。

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