荷物
支度を済ませて庭先に出ると、果奈が待っていた。玉之と、奉公人の双子も一緒だ。母のいないのを確かめて、声をかける。
「待たせたな」
めいめいの挨拶を済ませた風音に、果奈が歩み寄ってきた。
「なんだか、五年前を思い出しちゃうね」
「そうかな、あの時の方が賑やかだった。奉公人もたくさんいたしな」
「お母さんにも引きとめられて?」
肩をすくめると、大きな溜息が出た。
「よしてくれ。本当に大変だったんだ……今回はさすがに諦めたようだが」
「うまくいってるところ、見せてあげないとね」
「それ、前にも言ってなかったか」
腰に手をあてた風音に、果奈が振り返る。
「あれは、私のこと。どうなるか、全然見当もつかなくて……」
「うまくいったじゃないか」
「風音のおかげだよ。お父様に話をつけてくれなかったら、何も始まらなかったもの」
「果奈が父上の眼鏡にかなったんだ。見合っただけの努力をすればいい。私も、な」
風音は大きな荷物を引きずって、厩に向かった。見上げると、庇の下に態話託で「亜邦」と掘り込んであるのが分かる。
「そうだ、風音」
不意に果奈に呼びとめられる。
「何だ。式の打ち合わせもある。なるべく早く出発しなくては」
雲行きが怪しくなってきた。荷物がにわかに重くなる。
「ずいぶん重たそうな旅行鞄ですこと……何泊したら帰ってくるつもりなの?」




