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玉之
「お嬢様、果奈も、どこにいらしてたんですか」
勝手口から上がってきた二人を見つけたのは、女中の玉之だった。通いのはずだが、果奈が頼んだからか、待っていてくれたらしい。
「遅くなって、ごめんなさい。先輩たちの所に、結果報告にまわっていたから」
風音の読みとは反対に、気を利かせたのは玉之の方だた。
「その様子だと、随分良かったみたいだね。おめでとう。お嬢様も、おめでとうございます。男ばかりの中で一番でしょう。さすがです」
「ありがとう。果奈は、諜報部だ。おめでとう」
「ありがとうございます。こんなに誇らしい気分になるのは、生まれて初めてですよ。それにしても、果奈、本当によく頑張ったね」
「うん、これならすぐに家督も買い戻せるよ、お母さん」
耐えつづけてきた二人に、ようやく見え始めた光。脇で灯りの投げた光が楽しげに踊る様子を見つめながら、風音は熱くなった目頭を押さえた。
「さあ、お嬢様。奥様がお待ちですよ。明日出発なさる前に、一度しっかりとお話をしておきたいとのことです」
洛澄の養成学校に入った時にも、最後まで反対していた母である。素直に祝って返してもらえることは、到底望めそうにない。
「本当に涙が出てきた」
風音は長期戦に備えて玉之に用意してもらった粥をかき込んだ。今夜は、長い夜になりそうだ。




