第3話・火花
レオニスとヘイリオン、十歳を少し過ぎたばかりの二人の少年は暖炉の前に集まって座り、火の粉が爆ぜる音を聞いていた。とりあえずそろそろ帰って、明日の朝早く来ようと小声で話し合う二人の視線は、毛布の上に丸まっている小さな姿に向けられていた。
二人が立ち上がろうとしたのと同時に、毛布がカサカサと音を立てて動いた。黒いローブに包まれた小さな体が、ゆっくりと起き上がったのだ。火の光に照らされた肌は蒼白で、黒い髪と金色に輝く瞳は、暗闇の中でひときわ鮮やかに見えた。少女が顔を動かした瞬間、二人の少年の肩が同時にこわばった。
「……あ、起きた。」
レオニスに向かって、ヘイリオンが緊張した声で小さく囁いた。幼い二人の少年の呼吸は浅く規則的になり、小さな小屋の中はしばらくの間、静寂と薄い毛布が滑り落ちる音だけが満たしていた。
蒼白な肌、華奢な体躯。とてもじゃないが、本で読んだような『危険なもの』だとするには……、あまりにもひ弱に見えた。
「ここは……どこ?」
やがて口を開いた子供の声は低く、そしておずおずとしていた。
ヘイリオンは少女の青白い顔を少しの間見つめ、慎重に口を開いた。
「こんにちは。ここは僕たちの秘密基地だよ。心配しないで、森の奥だからまだ誰も知らないんだ。」
「……そうなんだ。ありがとう、助けてくれて。」
「いいんだよ。……えっと、大丈夫?どこか痛いところはない?……そうだ、名前はなんていうの?」
少女は少しの間目を伏せ、それから軽く首を振った。
「……痛いところは、ない。名前は思い出せないの。」
短い沈黙が流れた。暖炉の火が揺らめき、三人の子供の影を長く伸ばした。レオニスは腕を組んだまま眉間にしわを寄せた。しかし、ヘイリオンは小さな微笑みを浮かべてみせた。
「じゃあ、無理に言わなくてもいいよ。ゆっくり思い出すかもしれないから。」
レオニスは返事をせず、ただ炎だけを見つめていたが、突然立ち上がった。
「ヘイル、もう遅い。とりあえずオレたちも帰らなきゃ。」
二人を困ったような顔で交互に見ていたヘイリオンが頷いた。再び少女の方へ視線を向け、優しく言葉をかけた。
「明日また来るよ。だから心配しないで、今日はゆっくり休んで。ここにいれば吹雪も防げるから安全だよ。」
少女は答える代わりに毛布の端を握りしめ、頷いた。
ヘイリオンは暖炉の火の気をもう一度確認してから、小屋を出た。
*
外は先ほどよりも激しく雪が舞い散っていた。空まで暗くなっているのを見ると、今日はかなり遅く着いてしまいそうだった。大人たちに叱られるのは火を見るよりも明らかだったが、どうしようもなかった。
二人の少年はしばらく何も言わずに雪道を歩いた。足音がサクサクと響き、徐々に明るい光の中へと続いていった。悩んでいるような素振りを見せていたレオニスが、とうとう堪えきれないといったように口を開いた。
「ヘイル、あの子……そのままにしておいてはいけない。お前まで……、オレたちまで危険な目に遭うかもしれない。」
ヘイリオンは少しの間、顔を上げて空を見た。雪の結晶がまつ毛に乗ってきらめき、そして溶けた。
「わかってる。でもだからといって見捨てるわけにはいかないだろう。君だってわかってるくせに、レオ。」
レオニスはきっぱりと言ったが、声の端は少し震えていた。
「だからって、オレたちの手に負えることじゃないだろ。」
ヘイリオンは足を止めた。つられて立ち止まったレオニスは、その柔らかい麦畑色の髪が風に揺れるのをじっと見ていた。
「それなら……明日は来なくてもいいよ。僕一人でも世話はできる。だけどレオ、君が一緒にいてくれれば大人たちに言い訳もできるし、何よりも心強い。」
ヘイリオンのエメラルド色に輝く緑色の瞳が、まるでレオニスを見透かすように見つめた。レオニスは、その言葉になかなかきっぱりと答えることができず、ただ雪道だけをまっすぐ踏みしめて進んだ。風が強く吹きつけ、二人の少年の足跡を素早く覆い隠していった。
「どうなってもオレは知らないからな!お前の好きにしろ。」
「それで、明日は一緒に来ないの?」
「……知らない、聞くな!」
そう言って口をつぐんでしまったレオニスの名前を呼びながら、ヘイリオンは急いで後を追った。




