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書術道  作者:
―青龍編―
64/70

58.白の顕れ




美しい小川がいくつも集まり、やがて河となり、

そして滝となって落ちていく。

その姿は、あまりにも自然だった。

止めることもできず、責めることもできない。

ただ、人の力では抗えぬ流れが、そこにあるだけだ。


火夜は、その恐ろしさと美しさを、ただ呆然と見つめることしかできなかった。




※※※※※


翌日。


青龍の里は、驚くほど静まり返っていた。

龍麗は最期の時を自室で過ごし、一族たちは粛々と儀式の準備を進めている。

およそ十年ごとに繰り返されてきたこの儀式は、

急を要するものでありながら、皮肉なほど滞りなく進められていく。


儀式に臨む火夜は、早朝から姿を消していた。

残された三人は、居心地の悪さを抱えながら、何を話すでもなく居間に集まっている。

銀夜は出かける火夜に同行を申し出たが、断られた。

護衛としては退くべきではない場面だったかもしれない。

だが昨夜の騒動もあり、襲撃の懸念は薄い。


それ以上に――

龍麗と火夜の最期の時を、邪魔したくなかった。


その想いが、強かったのだろう。

慣れぬ寝室で寛げるはずもなく、三人は言葉もなく身を寄せ合う。

空気は重く、時の流れさえ鈍く感じられた。


用意された食事を形式的に平らげ、湯浴みを済ませる。

儀式の刻限まで、一刻半(三時間)

その頃になって、火夜が戻った。

帰りを迎え、ようやく言葉が交わされる。

火夜の身支度を整え、今度は銀夜と二人で儀式へと向かった。


その姿は、正月の巫女装束。

闇の中にあっても、神に仕える身でありながら、自らが光を放つように神々しい。

火夜という名の通り、()の中に灯る火、そのものだった。


――死に神。


その呼び名が脳裏をよぎる。

だが、今の火夜には似つかわしくない。

深く頭を垂れながら、真白はそう思った。


刻限が、刻一刻と迫る。

零時をもって龍麗は最期の時を迎える。


はずだった。


水しぶきの白が、

人の姿を取るまでは。




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