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 微かに感じる檜(ひのき)の香りが鼻腔を擽る。

 赤川は奥に見える観音開きの扉へ進む。

 右手で右側の扉を押すと、中から漏れ出す檜葉(ひば)の香りと、一斉に椅子と床が擦れる音が聞こえた。


「諸君。ご苦労であった」

 目の前に広がるのは長テーブルを左右から挟んで、こちらに敬礼する幹部たちだ。

 男性はもちろんだが、まだ若い女性二人も幹部として座っている。

 ここにいる全員は、日本解放戦線の初期から共に活動した者達である。

 赤川を信じてここまで来てくれた者たちに対し、感謝を忘れることはない。

 赤川はゆっくりと歩き、中央奥にある空いた椅子の前まで行き、止まる。

 全員、こちらを見ながら敬礼を続けており、赤川もここで敬礼する。

 赤川が手を下ろし着席すると、一瞬の間を置いて一斉に手を下ろし全員着席する。

「諸君らの力により電撃作戦を成功に収めたことに対し、改めてお礼を言う。ありがとう」

 赤川は座りながらお辞儀をすると、幹部たちもお辞儀をした。

「しかし、まだ安心は出来ない。鴨井の話によると中国・四国地方は未だ交戦中であり、九州地方は苦戦と聞く。これより、各地方の第一強撃部隊の応援と、東経138度線爆破隊の応援を開始する。まずは、渡部剛志」

 右手前の男が立ち上がる。

「はっ」

「貴様の部隊は東経138度線へ行き、爆破隊と共に検問所を設置せよ」

「はっ。承知しました」

「次に中国地方。広島県庁を本部として設置し、吉村孝明率いる部隊は、山口県と島根県を平定せよ」

 左手前の男が立ち上がる。

「はっ。承知しました」

「そして、鳥取県と岡山県は石森桜が平定せよ」

 吉村の後ろに座っていた茶髪の女性が立ち上がる。

「はっ。承知しました」

「互いに連携を取り合い、迅速に中国地方を平定せよ。吉報を待つ」

 三人は赤川に一礼して、椅子に座る。

「次に四国地方。ここは和嶋玲香を任命する。中国地方の二人と連携を取り合い、平定せよ」

 渡部の後ろに座っている女性が立ち上がる。

「はっ。承知しました」

 赤川に一礼して、椅子に座る。

 幹部たちの顔を見ると、その瞳の奥にある情熱が燃えていた。大和魂を蘇らせる信念が、そこに潜んでいた。

 しかし、赤川は覚悟している。

 この後に、発言する言葉に非難来ることを。

 赤川は、ゆっくりと口を開き発言した。

 

「最後に九州地方。ここは放棄し、焦土とする」

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