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満月 何歳に見える?

 今宵は満月。

 仕事終わりに、カペラのお店でかつての候補者とルナが月の入りご飯を食べている。 


「このステーキ、ものすごく美味しいですわね!」

 ルナはエリナが焼いた魔牛ステーキを美味しそうに頬張る。 


「でしょ〜?わかってるね!俺が仕入れ先からこだわってるからね!」

 カペラが接客の合間に四人の席に来てくれる。 

 アルトとリゲル、ノックスは黒酒を飲みながら骨付き肉や魔焼き鳥をつまんでいる。


「ていうかさー、前から思ってたんだけど、ルナちゃんって何歳なの? 見た目めっちゃ若いけど」

 カペラが悪気もなく、無邪気に聞く。


「わたくしですか? かれこれ250年生きておりますよ。」 

 それを聞いた影人達の手がぴたりと止まる。気まずい沈黙が流れる。 


「えっ...250歳...? 俺の母親と同い年じゃん.......」

 予想もしていない答えにカペラが愕然とする。    

「亡くなったアストライオス王とも同い年じゃねぇか....…?」 

 魔焼き鳥の串を持つ手が止まり、リゲルの顔が青ざめる。


「えっ、どういうことですの? というかあなた方いくつなんですの?」 

「俺とアルトは130歳。ノックスとリゲルは125歳だよ。」 


 それを聞いたルナは、業火のごとく頬を赤らめ焦りだす。

「な...…なんですって! あなた方、まだ子供じゃありませんか!! どうしましょう! わたくし、子供に手を出してしまった!!」  


「ブフォッ!」

 ノックスが飲んでいた黒酒を勢いよく吹き出す。


「いやいや、子供は言い過ぎでしょ! 人生100年だとしたら、俺ら、25歳と26歳だから!! ルナちゃんなんて50歳だよ!」 

「何言ってるんですか! 100歳換算したらわたくしが25歳で、あなた達、12歳半と13歳じゃありませんか!」 

「ありえないよ! てか確かに、よく考えたら、子供の頃から、奪目の儀でルナちゃんのこと見てたわ! まさかそんなに年上だったとは!」 


 ルナとカペラが激しく言い合う中、アルトが眼鏡をくいっと上げて二人を制止する。


「いや、まて。今の話でわかったぞ。影人の寿命は約500歳だが、天人の寿命は約1000歳ということだな? だから、そこを踏まえて年齢換算すると、結局私たちは全員25歳前後ということになる。」 

 アルトの冷静な計算に、皆納得した。 


「なるほど、そういうことでしたか...…影人はわたくしたちよりもはるかに寿命が短いのですね...…」 

「じゃあ精神年齢は一緒なのか……てかルナちゃん、100年前から見た目変わらなさすぎじゃない?」

「天人はあまり老化しないのですよ。300歳くらいで見た目が変わらなくなります」 

「そうなのか〜、すごいね!!」    

「......俺......新月の夜、250歳の手に触れて癒されてたのか....」 

 ルナとカペラが盛り上がる中、リゲルがしょんぼりした顔で焼き鳥を食べながらぼそっと言う。その独り言をノックスだけは聞き逃さなかった。 


 ◇ 


 王宮への帰り道、ノックスは改めてルナをまじまじと見てみる。

 容姿だけでいえば同年代にしか見えない。ジーっと見つめるノックスに、ルナが恥ずかしそうに聞く。


「ノックス、あなたはわたくしが...…その...…はるかに長く生きていること、嫌ではありませんの?」 

「いや、前から知識も包容力もすごいなって思ってたから、あんまり驚かなかったけど...…それより...…俺のほうが先に死ぬのかなって...…」


 それを聞いたルナはにっこりとほほ笑んだ。

「あぁ、その心配はいりませんよ。」 

「えっ、どういう意味?」 

「わたくし、わかるのです。この100年間の生活が過酷すぎて、おそらくかなり寿命が縮んでいると思います。長くてあと300年くらいなのではないかと」 


 ノックスは立ち止まって言葉を失った。 

 ショックだった。

(ルナは出会った頃からずっと強がっていたけれど、生贄として生きてきた100年間はやはり相当なストレスだったのか……もっと早くに気が付いていればよかった……)


「……あら、どうしてそんなに悲しそうな顔をしていますの? 影人の寿命は500歳程度なのでしょう? あなたとわたくしの残された寿命は、きっと同じくらいですわ。それに、わたくし、あなたがいない世界で何百年も生きたくありません」  


 ルナはノックスの手を握る。温かい手が冷たくなった心まで温めてくれる。

「だから、これからの毎日を大切に生きましょう?」 


 ノックスはふっと笑い、ルナのサラサラの銀髪を撫でる。青い瞳が見つめ合う。  

「そうだな...…ずっと大切にしますよ、ルナ姉さん」

「ふふ、これからもよろしくお願いします、ノックスくん」 


 二人は手をつないで、優しい月明かりのもと、仲良く王宮へと帰っていった。 



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