70/73
三日月 教えませんわ
三日月が東の空から昇り、月の塔を照らしはじめる。
ノックスはルナと月の出ご飯を食べながら、ぼんやり考えていた。
(昨日の昼は、すごかったな。あんな天にも昇るような経験、人生で初めてだ...… )
ルナの愛らしい顔を眺めながら、ノックスは考える。
(……ルナって、俺が初めてなのか……?)
「なあ、ルナ。光の世界にいたとき、その……恋人とか…いたのか?」
青い右目がこちらを見て、ルナは少し呆れたように笑った。
「何ですか、急に」
「いや……なんとなく」
「そんなこと聞いてどうするんですか。絶対教えませんわ」
「やっぱり、いたのか!? 」
机を揺らし必死になるノックスに、ルナは苦笑して近づき、頭をなでて抱きしめる。 ふんわりとした柔らかい感触と温もりに心の底まで溶けそうだ。
「昔のことなんて、どうでもいいじゃないですか。今は、あなたと一緒にいるんですから」
「……まぁ、そうなんだけど……」
ルナはふっと微笑んで、耳元でしっとりと囁く。
「昨日は、あんなに盛り上がったことですし? もう一勝負いたしますか、闇の王?」
「なっ……!」
勝負の内容を想像して耳まで真っ赤になるノックス。
ルナはノックスの赤みがかった茶髪を優しく撫でながら、くすっと笑った。




