満月 影人の決意
それまで黙って聞いていたルナが口を開く。
「光の王は、天女の状態を監視しています。奪目の儀が廃止され、わたくしが天寿を全うしたとしても、また新しい天女が送られてきてしまいます」
「ならば、光の世界とは……もう断絶しよう。無意味な憧れを捨て、無駄な生贄を招かないためにも、この闇の中で生きていこうではないか。……そのためには、光の王に正式に会い、謁見する必要がある」
王の言葉に、長老たちがざわめく。
「本来なら目を持つ私が行くべきなのだが……身体が朽ちていき行くことができない」
机の上に置いた手は震えていた。王はゆっくりと瞼を閉じた。
「王の代理として行くことになるから、可能なら王候補者から行ってほしい。生きて帰れるかもわからない、危険な旅になるだろう…...誰が行く?」
カペラは煌めく瞳に困惑を宿しながら、真っ先に手を振った。
「俺は絶対に行きたくありません! 俺が死んだら、妻が泣きます。子供ももうすぐ生まれるし」
アルトは黙って腕を組んでいたが、静かに首を横に振った。
「……死ぬかもしれないような、勝算のない任務は受けない主義だ」
リゲルは沈黙していた。少し迷っているようだったが、低くつぶやいた。
「行きたくないわけではないが……俺は......ここで死んだら……王になる道が閉ざされてしまう」
静まり返った広間で、ノックスだけが前を見据えていた。
「俺が行きます」
全員の視線が彼に集まる。ルナの青い瞳がかすかに揺れる。
「ルナのために。そして、この世界のために」
(闇の民はみんな光の世界に憧れてる。でも民が目を手に入れることはできない。……ただの夢物語にすぎない。だから扉を閉ざしたところで、皆の暮らしは何一つ変わらない。)
(これは民のためじゃない。……俺は、ルナのために行くんだ。)
広間は息を呑んだように静まり返った。
その中で、ノックスだけが決意を胸にしていた。




