71.プロポーズ
シオンがちゃんと私の想いを受け取ってくれたあの日から、シオンの溺愛モードは加速していき家で寛いでいるときは大体シオンの膝に乗せられている。
そんなシオンを見てお義母様は
「シオンったら溺愛体質だったのね~」
と感心したように言っている。
ちなみに、お義父様やお義母様に見られていても全く気にせず私を膝に乗せているのだからお義母様が驚くのも無理はない。
「父上も同じようなものだろう。レイが来てからは上手に隠してるが、レイが来るまでは父上の膝に乗っている母上をよく見たぞ」
あら。
「お義父様もお義母様も隠さなくてもよろしいのに」
「マーガレットが嫌がるもんだから」
「だって恥ずかしいじゃない!いい歳して」
「いつまでも仲睦まじいのは微笑ましいですわ」
「だって」
「じゃあこれからは遠慮しなくてもいいな」
お義母様が頬を赤らめている。仲睦まじい両親を見てたからシオンがこうなのだろう。
「ねえねえレイちゃん、結婚式はいつにするの?」
そういえばまだ決めてなかったなと思ってシオンを見てみるとなんか言いたそうな顔をしている。
「シオンどう思う?」
「母上余計なことを・・・」
「マーガレットまたシオンは恰好が付かないようだ」
恰好が付かないとは?
「あらやだ!シオンったら!わたくしいらないことを言ったわ。レイちゃん忘れて頂戴」
うん?何かはぐらかされた?
そんな会話をしたことすら忘れた頃。
ライに呼び出されて王宮へ赴いた。
「レイ!急に呼び出して悪かったね」
「どうしたの?」
「まあまあ。久しぶりに庭園でお茶でもしようよ」
「構わないけれど」
「じゃあ、先に行っててくれる?ちょっと準備があるから」
「わかったわ」
準備って何だろう?と思いながら庭園へと向かう。
庭園では四季折々の花々が植えられており、常に華々しく美しい。
そこで花を眺めていると
「レイ」
聞きなれた声。
振り向くとそこには騎士の正装をし真っ赤な薔薇の花束を抱えたシオンがいた。
「レイ。俺は気が利かず、プロポーズですら恰好が付かない。こんな俺だけど、レイを想う気持ちは誰にも負けない。
もうレイ無しの生活は考えられない。
愛しています。
俺と結婚してください」
跪き愛を乞うシオンはめちゃくちゃ素敵だ。
婚約の時にも求婚してもらっていたから、もうプロポーズはないと思っていた。
薔薇の花束を受け取り
「シオン、私の優先順位はきっと今までと変わらないと思うし危険であっても飛び込んで行ってしまうかもしれない。けれどシオンのことは誰よりも愛しているわ。
こんな私でよければ、喜んで」
もちろん返事はYesだ。
それを聞いたシオンは顔を輝かせ、花束ごと私を抱きしめた。
そして近づく距離。
目を閉じると優しい口づけが落ちる。
頭や目の上、額と顔中にも落ちる口づけを拒むことはない。それだけシオンに求められているのだと感じる。
「レイ、結婚式だがレイの成人の誕生日にしたい」
「ええ?あと半年ぐらいしかないけど」
「ダメか?」
まだ16。正直前世の倫理観で言ったら早すぎると思ってしまうがここは異世界!16歳で結婚?ザラにある話だ。
子犬のような目で見られて断れる人間がいるだろうか?いやいない。
「ダメじゃない」
「そうか!早く報告に行って準備を始めないとな!」
キラキラした子供のような目をしたシオンは可愛い。
「ふふ。そうね。シオン、ドレス選んでくれる?」
「レイ自分で選ばないのか?」
「だって私こだわりが無いの。だったらシオンが私に着て欲しいものを選んでくれると嬉しい」
「わかった!楽しみだなあ。早く結婚したい」
といちゃいちゃしていると
「シオン様、レイ様おめでとうございます。しかしながら皆様方がそろそろ我慢の限界だと思います」
と言うメリッサの声にワイワイ上がるたくさんの声。
「はっ?!お前たち見てたのか?」
とシオンが叫ぶその先は騎士団メンバーである。うん野次馬に来たのね。
「隊長が着替えてこそこそ出て行くんですもん。そりゃあもう皆で見守らねばと思いまして」
「薔薇の花束とか定番すぎるが、隊長がやると様になる。くそぅ!!」
「いちゃいちゃすんな」
「砂糖吐くわ!」
「美人な幼な妻!羨ましい!!」
「隊長ずるい!!」
等々やんややんやと掛けられる声。
「お前たち・・・もう解散!!!」
とシオンが追いかけていく。
野次馬の中にはもちろん私の家族やライにルイ、王妃様や陛下まで揃っているし何なら使用人までいる。
その後ちょっとしたパーティのようになったのは言うまでもない。