45.ルナールの王太子
ルナールの王太子が謝罪に来るということでディスィーヴとしては、もちろん王家だ。
私はライの代わりとして参加することとなる。
そしてルナールの王太子御一行様がディスィーヴへとやってきた。
謁見の間へと移された、謝罪の場。
両陛下、私、宰相、護衛といった少数精鋭である。
「ルナールの王太子よ、面をあげよ」
「はっ。ディスィーヴ国王陛下、並びに妃殿下、王太子殿下に拝謁できましたこと誠に光栄にございます。私はルナール国王太子、ユージンと申します。
この度は我が国の王女と公爵令息がディスティーヴの王太子殿下や令嬢に毒を盛り、尊厳を奪おうとしたこと、誠に申し訳ございませんでした」
とルナールの王太子は両膝を付き、頭を低く下げている。
基本的には頭を下げることが無い王族が、両膝を付き頭を下げるということはかなりの屈辱だろう。
プライドが高いであろう王族がそこまでするほど謝罪の意を示したかったのだろう。
「それで、此度の始末をルナールはどう考える?」
「これは、国王ではなく次期国王となる私の意見だと考えていただきたいのです。私は今までのような敵対する関係では無く、ディスィーヴ王国とは和平を築きたいと思っております。ディスィーヴとの争いを続けたい者は、一世代前の上位貴族の者達であり私の世代では敵国だと知らぬものもおります。
この度うちの者がしでかしたことは万死に値していることは重々承知しております。ですので、王女も令息も陛下が思うように罰していただいて構いません。
私は腐りきった上層部を一掃し、私を含め世代交代したいと思っております」
ルナールの王太子は国王簒奪を仄めかしている。
「ほほう。そなたが王になると?それでうちのメリットは?」
「まず、今後一切間者や刺客をおくり込むことはいたしません。それから国を行き来する際、国境を超える際に発生する賃金を一切無くします」
それは結構なメリットだな。刺客が来ないのは我々的にはありがたいし、国境を超える際の賃金が結構高い。普通の民では払えない額なのだ。
だからうちの国の商人が行き来しやすくなる。つまりは向こうの国の物がこの国に入りやすくなる。
物が出入りすると経済が回る。こちらも国境での賃金を低くしてしまえばより経済が回る。より両国の民が潤うのだ。
この王太子中々できる。
「まあ刺客が来なくなるのは、こちらとしても賛成だな。うちも国境でかかる賃金を低くするか?だがそちらの民の流出が止まらなくなるのではないか?」
陛下は、こちらも賃金下げてやってもいいがうちの方が大国なのだから民たちがうちへ大勢来てしまうけどいいのか?と自信たっぷりに言っているのである。
「そこは私の腕の見せ所です。民にとって魅力ある国にしてみせます」
と王太子ははっきり告げた。
その顔は嘘偽りなく本心の顔であった。
「そうか。では和平を結ぶか」
「はい。よろしくお願い申し上げます」
「だがルナールの王太子よ、まずはそなたが国王になってからだ」
「はい。必ずや近い未来に」
とルナールの王太子が王となるとき、ディスィーヴとルナールの和平が結ばれることとなった。
もちろん契約を破った場合は、ベルセルクと同じようにディスィーヴの従属国となることも契約の一部に記されてある。
今まで悩まされてきた隣国との問題が終結することとなる。
ずっと和平を結びたかった陛下の願いが叶うのである。