第7話:ナビゲーターの助言、嫁へのプレゼントはドラゴンの逆鱗
屋敷での生活にも慣れてきたある日。俺は一人、広大な庭で頭の中の「声」――自称ナビゲーターと相談していた。
「なぁ、ユカリに何かプレゼントしたいんだ。あの露出狂みたいな鎧、性能はいいんだろうけど、あいつ本気で嫌がってるだろ?」
『肯定します。ユカリ様の精神衛生上のダメージは蓄積しており、このままでは羞恥心が暴走し、王都が消滅する恐れがあります』
「物騒すぎるだろ! なんかいい素材はないか?」
『提案です。王都の北に位置する「絶望の崖」に、古龍レッドドラゴンが棲息しています。その胸元にある「逆鱗」を「さばく」ことで、物理防御力と羞恥心(露出)を同時にカバーする究極のドレスを「満たす」ことが可能です』
「よし、決まりだ。ユカリには内緒で行ってくる」
俺は新スキル『隠密』を発動させ、セバスにも気づかれぬよう屋敷を抜け出した。
ドラゴンvs主夫(ナイフ装備)
崖の頂上。そこには全長30メートルを超える巨躯、炎を吐く災厄――レッドドラゴンが鎮座していた。
「グルゥァァァァァッ!」
『敵対存在を確認。解析完了。直人様、右前脚の付け根、第3鱗に「さばきポイント」を発見しました。あそこを起点にすれば、肉質を損なわず解体可能です』
「了解……いける!」
俺は『素早さ上昇』を全開にし、ドラゴンの懐へ飛び込んだ。かつて満員電車をすり抜けたあの技術が、今、神速の移動へと昇華される。
――ズバァァァァッ!!
『神のナイフ』が真紅の鱗を切り裂いた。
『スキル【さばく者】発動。対象:古龍。――解体完了』
一瞬。ドラゴンの咆哮が止まり、その巨体が光の粒子となってナイフに吸い込まれていく。
『【満たす者】発動。以下の素材および能力を抽出しました』
【古龍の逆鱗(極希少)】獲得
【耐火・耐魔(最大)】習得
【竜の咆哮(威圧)】習得
「よし、これで材料は揃ったな」
サプライズ・プレゼント
その晩。俺は『創造』の心得があるナビゲーターの助言を受け、徹夜でドレスを作り上げた。
「ユカリ、これ。……その、プレゼントだ」
翌朝、俺が差し出したのは、深紅に輝くシルクのような肌触りのロングドレス。ドラゴンの逆鱗を魔法で繊維状に加工した、この世界最強の防具(兼おしゃれ着)だ。
「えっ、嘘、かわいい……! これ、私に着ていいの?」
ユカリが目を輝かせて着替えてくる。
今度は肌の露出も控えめで、それでいて彼女の美しさを引き立てる完璧なシルエットだ。
「……どうかな、直人?」
頬を赤らめてドレスの裾を摘まむユカリ。その背後には、鼻血を出して卒倒するメイドたちと、感動でむせび泣くセバスの姿があった。
『報告。ユカリ様の好感度が最大値を突破。精神安定により、王都消滅の危機は回避されました』
「よかったな、ユカリ。……って、おいナビゲーター。なんでドレスに『自動洗浄機能』と『自動修復機能』まで付いてるんだ?」
『主夫のやりくりとは、家事の手間を省くこと。これもまた、究極の愛の形です』
どうやら俺のチート能力は、嫁を幸せにするたびに、どんどん家庭的に進化していくらしい。




