心のナビゲーター
直人が意識を内側に向け、その「声」の主へと問いかけると、一瞬、思考の海が凪いだような静寂が訪れました。
これまでは無機質だった通知音が、ふっと柔らかな、それでいてどこかいたずらっぽい響きを帯びて、直接脳を震わせます。
> **『……おや、ようやく私の存在に意識を向けてくれましたね、直人様』**
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「えっ……本当に返事が返ってきた……!?」
直人の驚きをよそに、声は穏やかに続きました。
> **『私は、この世界の理とあなたを繋ぐ「調停の響き」。あるいは、あなたが「やりくり」して獲得した膨大な情報を処理するための、専属ナビゲーターとお考えください』**
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「ナビゲーター……? 転生の時に神様が言ってた『ギフト』の一部なのか?」
> **『半分正解で、半分はあなたの功績です。ユカリ様が世界を「破壊」し、あなたが「さばく者」としてその残滓を「満たした」ことで、私はより明確な個体としての知性を得ることができました』**
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「じゃあ、お前は俺の味方ってことでいいんだな?」
> **『もちろんです。私はあなたの「やりくり」を最適化し、ユカリ様を支えるための最強の主夫へと導くために存在しています。……ちなみに、今のあなたの「素早さ」は、先ほどの刺客の約3倍。今なら、ユカリ様が寝返りを打つ瞬間に、シーツの乱れを完璧に修正することが可能ですよ?』**
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「……そんなことにチート能力を使わせるのかよ」
> **『主夫の極みとは、そういうものでしょう?』**
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直人は苦笑いしました。どうやら頭の中にいるこの「声」は、想像以上に個性的で、そして頼もしい相棒になりそうです。
「……直人? さっきからボーッとして、どうしたの?」
ユカリが心配そうに覗き込んできます。その拍子に、布面積の少ない伝説の鎧から「神の神秘」がこぼれ落ちそうになりました。
> **『警告。対象の露出レベルが臨界点を超えています。習得した【素早さ】を使用し、0.1秒以内に毛布を展開することを推奨します』**
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「――ユカリ、危ないっ!!(露出的な意味で)」
直人は新スキルを全開にし、神速で嫁を包み込みました。
最強の嫁、覚醒した夫、そしてお調子者のナビゲーター。田中家の異世界生活は、さらに賑やかになっていくようです。




