第6話:帝国からの刺客、嫁に魅了され、旦那に捌かれる
豪華な屋敷での生活が始まって数日。俺たちの平穏は、窓から音もなく侵入してきた「影」によって破られた。
「……見つけたぞ。王国が隠し持つ『白き神体』……わが帝国の脅威となる前に、その首、貰い受ける!」
現れたのは、隣国・バルガ帝国が放った最高クラスの暗殺者、黒狗のギル。
数多の要人を闇に葬ってきた男が、寝室でくつろぐユカリへと襲いかかる!
「死ねッ!」
だが、ユカリがゆっくりと振り返り、あの伝説の(布面積が絶望的に少ない)鎧姿で、小首をかしげた。
「……え、誰? 泥棒?」
その瞬間。
ユカリが持つパッシブスキル**『魅了(全性別)+500』**が、ギルの脳髄を直撃した。
「ッ!? ……な、なんだ……この、直視できないほどの輝きは……!?」
殺気で満ちていたギルの瞳が、一瞬でとろけ、頬がボッと赤く染まる。
「女神……? いや、天使……? ああ、私はなんて罪深いものを手にかけようとしていたんだ……」
凶器をポトリと落とし、その場に膝をついて拝み始める暗殺者。
「ちょっと直人! この人、急に拝みだしたんだけど!」
「……ユカリ、お前の装備、やっぱり呪いか何かの類だろ」
俺は溜息をつきながら、腰の『神のナイフ』を抜いた。
「おい、暗殺者さん。うちの嫁をジロジロ見るのはその辺にしてくれ。……不法侵入は、きっちり『さばかせて』もらうぞ」
俺がナイフを構えた瞬間、新スキル**『さばく者』**が発動した。
俺の目には、ギルの着ている高級な隠密装備や、身体能力を強化している魔力回路の「構造」が、まるで料理のレシピのように透けて見える。
「……そこだ」
――シュパパパパンッ!!
目にも留らぬ速さで、ナイフの先がギルの周囲を踊った。
「なっ……!? 体が、軽い……?」
ギルが我に返った時、彼は一糸まとわぬ姿(靴下だけは残った)で立ち尽くしていた。
俺が『さばく者』のスキルを使い、彼が身につけていた武装、衣服、果ては彼自身の「隠密能力」の源までを、**「皮膚一枚傷つけずに」**一瞬で解体・切除したのだ。
さらに、頭の中に無機質な声が響く。
【固有スキル:『満たす者』が発動しました】
『さばく者』によって解体された対象から、以下の能力を抽出・吸収します。
【隠密(極)】習得
【素早さ上昇(大)】習得
【毒牙(あらゆる毒を刃に宿す)】習得
「……な、なんだこれ。俺の中に、アイツの力が流れ込んできたぞ」
「ヒィィッ!? 私の特注装備も、長年鍛えた暗殺技術も……すべて奪われた!? お、お前は一体……!」
全裸で震えるギルを、俺は冷めた目で見下ろした。
「俺? ただの専業主夫だよ。……嫁の安眠を妨げる奴は、たとえ暗殺者だろうが食材に『やりくり』させてもらうからな」
「直人の包丁さばき、昨日よりキレが増してない……?」
ドン引きするユカリを横目に、俺は全裸の刺客をセバスに引き渡した。
「セバスさん、こいつ、とりあえず庭の肥料……じゃなくて、衛兵に突き出しといて。あ、この『毒牙』のスキルで、明日の朝食に使う毒消しハーブの鑑定もできそうだ」
「かしこまりました。……いやはや直人様、敵の存在そのものを『さばいて』、ご自身の糧として『満たす』とは。まさに究極のやりくり上手!」
翌朝、帝国のギルドには「王国の白き神体は、見た者を即座に全裸にし、その魂まで剥ぎ取る恐るべき夫婦が守っている」という、戦慄の報告が届くことになるのだが……。
嫁が「最強の盾(と露出)」なら、俺は「最強の回収(と調理)」。
俺たちの異世界夫婦無双は、どうやら誰も止められそうにない。




