第29話:新大陸の絶景を独り占め! 浮遊城に「天空の露天風呂(混浴)」をやりくりせよ!
「美食の谷」で手に入れた『キング・オブ・オーブン岩』をキッチンの床下に埋め込み、床暖房まで完璧に仕上げた直人は、次なる「やりくり」を提案した。
「ユカリ、ナビル。新大陸の空はこんなに綺麗なんだ。……どうせなら、この浮遊島の特等席に、最高の露天風呂を作らないか?」
「露天風呂!? 素敵ね、直人! 空を飛びながらお風呂に入れるなんて、女神の私でも考えたことなかったわ!」
「……解析中。露天風呂によるリラクゼーション効果は、魔力回復速度を200%向上させます。……さらに、直人様。先ほど仰ったのは**『混浴』**ということでよろしいですね?」
ナビルがエルフの指先で空中をスワイプし、設計図を広げる。
主夫のさばき:天空の湯殿
直人は『神のナイフ』を使い、浮遊島の最も見晴らしの良い、雲が足元を流れる崖際をさばき始めた。
「ナビル、岩盤を円形にくり抜いてくれ。ユカリ、そこに『美食の谷』で見つけた、お湯が冷めない『熱魔石』を敷き詰めるんだ」
「まかせて! ――聖なる沸騰!」
ユカリが指先から聖水を注ぎ込み、適温に調整する。
さらに直人は、空中都市でもらった「高山ハーブ」をネットに入れ、香り高い薬湯を演出した。
「仕上げだ。ナビ、島全体を包む結界を少しだけ調整して、お風呂の周りだけ風が入らないようにしてくれ。……よし、**『田中家特製・天空露天風呂』**の完成だ!」
混浴の「やりくり」攻防戦
夕暮れ時。新大陸の二つの月が昇り始めた頃。
完成した露天風呂には、乳白色の湯気が立ち込め、幻想的な雰囲気が漂っていた。
「……さあ、入ろうか。今日は家族全員、お疲れ様会だ」
直人が腰にタオルを巻いて現れると、そこにはすでに先客がいた。
「直人様、お待ちしておりました。……ナビル、管理官として、お湯の温度と直人様の心拍数を『至近距離』で管理させていただきます」
ナビルは、濡れると少し透けるような薄い湯浴み着(エルフの伝統衣装という設定)を纏い、しどけない姿で湯船の縁に腰掛けていた。
「ちょっとナビル! 私を差し置いて一番風呂なんてズルいわ!」
ユカリも、聖なる光で絶妙に隠しつつ(?)、大胆な湯浴み姿で飛び込んできた。
「あ、熱っ……いや、いい湯だ。……絶景だな、おい」
目の前には、見渡す限りの雲海と星空。
そして右側には、お肌300%艶々の正妻・ユカリ。
左側には、具現化したばかりの熱を帯びた肌を持つ妹分・ナビル。
「直人、背中流してあげるわね! はい、こっち向いて!」
「直人様、私は前側を……筋肉のコリを解きほぐすために、密着してマッサージを……」
「……お、おい。混浴ってのは、もっとこう、のんびり浸かるもんだろ……」
『ナビルより警告。直人様のバイタル、危険域に到達。……これより、露天風呂は「家族の絆を深めるための密着やりくり」へと移行します。……お姉様、準備はよろしいですか?』
「ええ、もちろんよ、ナビルちゃん! 今夜は逃がさないわよ、直人!」
新大陸の空に、楽しげな(そして少し艶っぽい)声が響き渡る。
「おーい、セバス! メイドのみんなも! デス・アビスも、スフィンクスも! 仕事は終わりだ、みんなで風呂に入るぞ!」
直人の号令が浮遊城に響き渡る。
「……えっ、旦那様。我々使用人も、ご一緒してよろしいのですか?」
セバスが珍しく、眼鏡を少しずらして驚きの声を上げた。
「当たり前だろ。家族なんだから。ほら、ナビルが作ったこの『超巨大・拡張浴槽モード』を見ろよ!」
ナビルがエルフの指先でパチンと音を鳴らすと、崖際に作られた露天風呂が、魔法的な空間拡張によってサッカー場ほどの広さまでググーッと広がった。
カオスで平和な「田中家の休日」
「わあああ! すごい! 雲の上がお風呂になってる!」
「直人様、ありがとうございます! 失礼しまーす!」
メイドたちが次々と、可愛らしい湯浴み着姿で飛び込んでいく。
「ふむ……。我も誘われるとはな。……では、この『虚無の体』、少し温めさせてもらおうか」
破壊神デス・アビスも、触手を器用にまとめて、隅っこの方で「ふぅ……」と深いため息をつきながらお湯に浸かる。
「クックック……。この湯加減、我のスパイス調合にも通ずる完璧な配合だ。……直人、背中を流してやろうか?」
スフィンクスまでが、巨大な前足を器用に使ってセバスの背中を流し始めた。
「……おや、スフィンクス殿。それは恐縮ですな。では、お返しに私は貴方の黄金の毛並みをブラッシングいたしましょう」
正妻と妹分、そして大家族の絆
湯船の特等席では、ユカリとナビルが直人を挟んで座っていた。
「あはは! 直人、見てよ。みんなあんなに楽しそう。……やっぱり、露天風呂を作って正解だったわね」
ユカリが、お湯に浮かべたお盆の上の日本酒(新大陸の米で直人が醸造したもの)をくいっと煽り、真っ赤な顔で笑う。
「肯定です。田中家の生産性は、この『混浴による親睦』によってさらに150%向上しました。……ですが直人様。先ほどからメイドの皆さんの視線が、貴方の鍛え上げられた体に釘付けですよ?」
ナビルが少し嫉妬深そうに、直人の腕に自分の細い腕を絡める。
「……お、おい。あんまりくっつくなよ。みんな見てるだろ……」
「いいじゃないの! 今日は無礼講よ!」
ユカリが反対側から抱きつき、直人は新大陸の絶景を前に、文字通り「身も心も熱い」状態に。
雲海に沈む夕陽。
賑やかに笑うメイドたち。
背中を流し合う執事と魔獣。
そして、両脇に二人の愛すべきパートナー。
「……最高だな、このやりくり」
直人は夜空を見上げ、独りごちた。
新大陸の過酷な環境さえも、この「家族」がいれば、ただの贅沢なバカンスに変えていける。
だがその頃、新大陸の最果て「神の食卓」では、あまりにも騒がしい田中家の気配を察知した『退屈した神』が、ニヤリと不敵な笑みを浮かべていた……。




