第25話:新大陸の「動く迷宮」。その正体は、1000年間忘れられた「自動お掃除ロボット」の暴走だった!?
精霊の森から浮遊島へと帰還した俺たちは、まず、屋敷の全員をリビングに集めた。
傍らには、透き通るような銀髪と、データの燐光を湛えた瞳を持つ「具現化したナビル」が、エルフの礼装を完璧に着こなして立っている。
「……えー。みんな、急に集まってもらって済まない。今日は新しい家族……というか、スタッフを紹介する」
俺がそう言うと、セバスを筆頭にメイドたち、さらには掃き掃除の手を止めた破壊神デス・アビスまでが、興味津々でナビルを見つめた。
ナビル、衝撃の自己紹介
「初めまして。私は直人様の『内側』を管理しておりました論理モジュール、改め、**田中家・専属システム管理官(および第二の花嫁候補)**のナビルです」
ナビルが優雅に一礼する。その「第二の花嫁」という言葉に、ユカリが「ちょっと!」と即座に反応したが、ナビルは涼しい顔で続けた。
「セバス殿。貴方の淹れる紅茶の温度設定は完璧ですが、茶葉の抽出時間はあと3.2秒短縮可能です。メイドの皆さん、廊下のワックス掛けの角度は45度が最適です。……デス・アビス殿。貴方のゴミ処理能力は、あと15%ほど出力の『やりくり』ができますね。私が効率化してあげましょう」
「……な、なんなのだ、この女。我が隠していた魔力の余剰分を、瞬時に見抜くだと……!?」
破壊神が戦慄し、セバスが感心したように眼鏡を光らせる。
「ほう……。直人様の脳内にあったあの叡智が、これほど美しい御姿で具現化されるとは。これは、我々も負けてはいられませんな」
「ナビルちゃん、よろしくね! 一緒にお掃除のやりくり、頑張りましょう!」
メイドたちは、新たな「最強の家事アドバイザー」の登場に、むしろ大喜びだ。
こうして、ナビルは「田中家のブレイン」として、瞬く間に屋敷に馴染んでいった。
動き出す「迷宮」の正体
顔合わせが終わった直後、浮遊島が大きく揺れた。
『ナビルより報告。前方、新大陸の平原を時速60キロで爆走する「巨大な建造物」を確認。……あれは「動く迷宮」と呼ばれていた古代の自動清掃機【クリーニング・タイタン】です』
「……動く迷宮? それが掃除機だってのか?」
窓の外を見ると、確かに巨大な石造りの城のようなものが、猛スピードで地面を削りながら突き進んでいる。それが通った跡は、草木一本残らず更地になり、岩石すらも吸い込まれていく。
「大変よ直人! あのままじゃ、さっきの空中都市の民たちが植えたハーブ園が飲み込まれちゃう!」
「……1000年間、命令を上書きされずに暴走し続けているようですね。……直人様、あれを『さばいて』、田中家の自動お掃除ロボットとして再利用しましょう」
ナビルが、エルフの体で軽やかに俺の隣に並び、その白い指先で迷宮の「構造線」を空中に投影した。
主夫のさばき:巨大掃除機のメンテナンス
「よし、やるか。ナビル、同期しろ!」
「了解。直人様、迷宮の『吸引口』と『動力源』の継ぎ目を視覚化します……今です!」
直人は『神のナイフ』を抜き、猛スピードで迫る巨大迷宮に向かって跳躍した。
――シュパパパパパンッ!!
「スキル【さばく者】! 1000年分の『ゴミ詰まり』と『暴走回路』を解体! ついでにユカリ、洗浄を頼む!」
「まかせて! ――聖なる高圧洗浄!!」
ユカリが放った大量の聖水が、迷宮内部の汚れを瞬時に洗い流し、直人のナイフが「掃除」の概念を再定義する。
『スキル【満たす者】連結。迷宮のAIをナビルとリンク。……完了。これより【クリーニング・タイタン】は、田中家・浮遊島の「自動外部清掃ユニット」として登録されました』
巨大な迷宮がピタリと止まり、シュン……と可愛らしい音を立てて、俺たちの浮遊島の真下にドッキングした。
「ふぅ。これで庭の外側の掃除も自動化できたな」
「直人様、素晴らしいやりくりです。これで私たちは、さらに『プライベートな時間』を増やすことができますね」
ナビルが俺の腕にそっと自分の腕を絡めてくる。それを見たユカリが、頬を膨らませて反対側の腕を掴んだ。
「ちょっとナビル! どさくさに紛れて直人の腕を取らないでよ!」
「ユカリ様、これも効率的な『親愛のやりくり』です。……ね、直人様?」
新大陸の冒険は、強力な味方を得て、さらに賑やかな……そして主夫の心臓に悪いものへと加速していく。




