番外編:高純度コラーゲンの誘惑と、止まらない「やりくり」
クラーケン尽くしの豪華な晩餐が終わり、屋敷には静寂が戻っていた。
だが、リビングに残された空気は、決して静かではなかった。
「……ユカリ」
「な、なあに、直人」
直人が声をかけると、ユカリはびくりと肩を揺らした。
ナビゲーターが告げた「肌の艶300%上昇」という解析結果は、伊達ではなかった。月光を反射するまでもなく、隣に座るユカリの肌は、まるで真珠の内側から発光しているかのように瑞々しく、滑らかに輝いている。
(……まずい。視界に入るだけで、指先が熱くなる)
直人は必死に視線を逸らそうとしたが、隣から漂ってくる「女神の香気」に、クラーケンの濃厚な旨味以上の毒性を感じていた。
『補足。直人様の心拍数は現在、通常の1.5倍。ユカリ様の体温は平熱より0.8度上昇しています。互いの「親和性」が極限まで高まっており、これ以上の沈黙は精神衛生上、推奨されません』
「ナビゲーター、お前は黙ってろ!」
思わず口に出した直人に、ユカリがさらに顔を真っ赤にして俯く。
「……ねえ、直人。ナビゲーターが言ったこと、気にしてるの?」
「……気にするだろ、あんなこと言われたら」
「…………。……私、お肌だけじゃなくて。なんだか、体中が熱くて、力が入りにくいっていうか……」
ユカリが、縋るように直人の服の袖を指先でつまんだ。
コラーゲンの影響か、その指先の触れ心地さえも、いつもより柔らかく、吸い付くような質感を帯びている。
上目遣いで見つめてくるユカリの瞳は潤み、その艶やかな肌は、今や羞恥と期待で薄桃色に染まっていた。
「……ユカリ、俺は主夫だ。出された『最高級の素材』を、そのままにしておくなんて……できない性分なんだ」
「……、……っ」
直人は、震えるユカリの肩を力強く抱き寄せた。
触れた瞬間に伝わる、彼女の熱。肌のあまりの心地よさに、直人の理性という名の「さばき」は一瞬で崩壊した。
「今夜の『やりくり』は……明日動けなくなる覚悟でいくからな」
「……うん。直人になら……いくらでも、やりくりされてもいいよ……」
ユカリの声は、熱を帯びて甘く蕩けていた。
直人は彼女を横抱きにすると、一歩一歩、その重みと肌の感触を確かめるように寝室へと向かった。
新大陸の夜風が、バルコニーを優しく揺らす。
今夜、田中家で繰り広げられる「激しいやりくり」の全容を知るのは、二人の吐息と、静かに記録を閉じたナビゲーターだけだった。




