第16話:学園祭は大パニック! 直人のカレー屋に行列が、ユカリのメイド喫茶に神降臨!?
王立アカデミーの特別講師として数日。今日は待ちに待った学園祭だ。
「生活魔法と家庭科こそが最強」という俺たちの授業を受けた生徒たちは、すっかり感化され、とんでもない出し物を企画してしまった。
ユカリのメイド喫茶:神々しすぎて直視不能
「……直人、本当にこれを着なきゃダメなの?」
生徒たちが用意したのは、フリルとレースをふんだんにあしらった、究極の「聖メイド服」。
ユカリが着ると、もはやメイドというより『奉仕を司る女神』そのものだ。
「似合ってるよ、ユカリ。……ただ、これだと客が全員、成仏しちゃうんじゃないか?」
案の定、開店と同時にユカリのメイド喫茶には長蛇の列……どころか、**「巡礼者の群れ」**が押し寄せた。
「お、お帰りなさいませ……ご主人様(消え入りそうな声)」
ユカリが照れながら放った一言に、
「「「おおおおおっ!! 救済だ! 救済が見えるぞ!!」」」
と、客席の騎士や魔導師たちが一斉に跪いて祈り始めた。挙句の果てには、空から本物の下級神たちが「伝説の白き神体が給仕をしていると聞いて!」と降臨してくる始末。
「ちょっと直人! 神様までコーヒー注文しに来たんだけど!?」
直人のカレー屋:魔王、バイトリーダーになる
一方、俺は校庭の一角で、例の「魔王直伝カレー」の屋台を出していた。
あまりの香りに、学園祭中の人間が吸い寄せられている。
「おい、直人。タマネギの『さばき』が甘いぞ。もっと涙を誘うような切り方をしろ」
「魔王様……なんであんた、エプロンして隣で手伝ってるんだよ」
視察(という名の手伝い)に来た魔王ルシファーが、ノリノリでタマネギを飴色になるまで炒めている。
「世界最強の主夫」と「最強の魔王」が並んで作るカレー。その魔力(旨味)はもはや物理的な衝撃波となっていた。
『スキル【満たす者】発動。カレーを一口食べた客の「悩み」を解体し、「明日への活力」として再構築。――報告。現在、学園祭の幸福度が測定不能です』
影の魔導師、参戦(秒殺)
そんな多幸感溢れる中、ついに「戦争狂の天才魔導師」が動き出した。
彼は屋台の列に紛れ、俺に禁忌魔法を叩き込もうと杖を構える。
「くくく……無防備だな。そのナイフの権能、私が――」
だが、彼の杖が光を放つより速く、隣で皿を洗っていた魔王の視線が彼を射抜いた。
「……貴様、私のカレーを待つ列を乱すつもりか?」
「ひ、ひぃっ!? ま、魔王ルシファー!?」
さらに背後からは、メイド喫茶の騒ぎに疲れたユカリが、真っ赤な顔で歩いてくる。
「もう嫌だー! 直人、神様たちが『美味しいコーヒーの淹れ方に神託を授ける』ってうるさくて――あら、変な人がいる」
「ユカリ、危ない……こともないか」
俺は『神のナイフ』を鞘に納めたまま、魔導師の杖を「さばいた」。
刃を立てるまでもない。指先で魔力の流れを弾くだけで、彼の杖はただの「肩叩き棒」に変わり、彼自身が隠し持っていた野望は「美味しいカレーを食べたいという純粋な食欲」に書き換えられた。
「……あ、あれ? 俺は何を……。そうだ、大盛りで一つください」
「はい、毎度。魔王様、一皿追加だ」
「承った。……直人、次はナンを『さばく』工程を教えろ」
学園祭の終わり
夕暮れ時。
「史上最も平和で、最も胃袋が満たされた学園祭」として伝説に残る一日が終わった。
「疲れたぁ……。でも、みんな喜んでくれたみたいね」
ユカリがメイド服のまま、俺の肩に頭を預ける。
「ああ。魔王も満足して帰ったしな。……さあ、明日は休みだ。二人でゆっくり、庭の聖獣たちと遊ぼうか」
だが、俺たちはまだ知らない。
若返った国王が「やはり直人殿の料理が忘れられぬ!」と、王位を返上して田中家の「料理見習い」に志願しようとしていることを……。
田中家のドタバタ異世界ライフ。
主夫の苦労は、まだまだ終わる気配がない。




