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第11話:田中家の庭、ついに世界樹が発芽する。収穫物は「万能薬」?

魔界に平和なカレーの香りを残し、俺たちは王都の我が家へと帰還した。

「食で魔王を屈服させた聖夫」という噂は、俺の知らないところで尾鰭がつき、いまや世界中の美食家や王族が俺の『神のナイフ』の一振りを求めて喉を鳴らしているという。

だが、光が強まれば影も濃くなる。

「魔王が戦わないなら、我らが戦争ビジネスを作ればいい」

そんな不穏な企みを抱く軍火商や主戦派の貴族たちが、密かに動き出していた。

世界樹の発芽

そんな不穏な空気も知らず、俺はナビゲーターの助言に従い、庭の「やりくり」に精を出していた。

魔王から譲り受けた『魔界の肥沃な土』と、ドラゴンの血を『さばいて』精製した栄養剤を混ぜ合わせ、庭の片隅に埋めたのだが……。

「……なぁ、ナビゲーター。これ、明らかに育ちすぎじゃないか?」

昨日まで芽だったものは、一晩で屋敷の屋根を超える巨木へと成長していた。

七色に輝く葉を湛え、周囲には神々しいまでの魔力が満ち溢れている。

『報告。環境の最適化が極まった結果、伝説の【世界樹ユグドラシル】の発芽に成功しました。現在、この庭は世界で最も高濃度な治癒結界に包まれています』

「世界樹って……それ、国がひっくり返るレベルの代物だろ!」

「直人! 大変よ、この木から変な実がなってるわ!」

ユカリが指差す先には、透き通った黄金のリンゴのような実が鈴なりになっていた。

『鑑定完了。収穫物は【世界樹の涙(万能薬)】です。一口食べれば欠損した身体すら再生し、あらゆる呪いを解く究極の食材(薬)です』

忍び寄る「影」

その時、俺の『隠密』スキルとナビゲーターが同時に反応した。

『警告。屋敷の周囲に武装集団を確認。数は約200。軍需ギルド「鉄の蛇」の私兵団です。目的は世界樹の強奪、および直人様の拉致と推測されます』

「戦争を作るために、この木を利用しようってわけか。……あいつら、俺の庭をなんだと思ってるんだ」

俺は静かに『神のナイフ』を抜いた。

「ユカリ。今日は庭の『大掃除』の日だ。お前は家の中で、セバスたちと今日収穫した万能薬を使って、最高に贅沢なジャムでも作っててくれ」

「えっ? でも敵が……」

「大丈夫だ。あいつらは敵じゃない。……ただの『質の悪い肥料』だ」

俺の目に、敵の軍団の「脆弱な陣形」と「邪悪な魔力の流れ」が、さばくべき素材のラインとして浮かび上がる。

庭師(主夫)の裁き

屋敷の門を壊して踏み込んできた重装歩兵たちに対し、俺は姿を見せることなく『隠密』のまま、その中心でナイフを振るった。

「な、なんだ!? 刃物も見えないのに、鎧だけがバラバラに――」

――シュパパパパパンッ!!

『さばく者』と『満たす者』の同時発動。

俺は彼らの命を奪うことはしない。ただ、彼らが持つ「闘争心」と、不当に蓄えた「装備の魔力」をすべて解体し、吸い取っていく。

『スキル【満たす者】発動。敵の戦意を「庭の養分」に変換。武装の鋼鉄を「高品質なクワの素材」へと抽出しました』

一瞬にして、200人の兵士たちはパジャマ姿(予備の衣類までさばいた)で、虚脱感に包まれて庭に転がった。

「……あ、あれ? 俺たち、何しに来たんだっけ……?」

「なんだか、急に平和な気分だ。花でも植えたい……」

戦意を奪われ、世界樹の治癒結界にあてられた彼らは、もはや兵士ですらなくなっていた。

「……よし、これで肥料の追加は完了だな」

俺はナイフを鞘に収め、キッチンから漂ってくる「世界一甘いジャム」の香りに鼻をくすぐられた。

戦争を望む連中には、この平和な庭の味は一生わかるまい。

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