特別編:至高のスイーツと、二人の甘い夜
魔王からの招待状や帝国の刺客など、騒がしい日々が続いていたが、今夜は珍しく予定が何もない。
セバスやメイドたちにも早めの休暇を与え、広い屋敷には俺とユカリの二人きりだ。
「ねえ、直人。今日はなんだか……甘いものが食べたい気分」
風呂上がり、薄手の寝巻き(今度は俺が新調した、透けないけど柔らかい最高級コットンのやつだ)に身を包んだユカリが、ソファで隣に座りながら甘えるように言った。
「そう言うと思って、準備してあるよ」
俺はキッチンへ向かい、今日のために『神のナイフ』で仕込んでおいた特製スイーツを運んできた。
黄金バッファローのミルクで作った『神聖バニラ・ムース』
【神聖バニラ・ムース:特製】
特性:究極の口溶け
効果:食べた者の精神を100%リラックスさせ、愛の感情を極大化させる。
「わぁ……綺麗。これ、直人が作ったの?」
「ああ。ナビゲーターと一緒に、魔界の果実から抽出した天然の甘味料と、黄金バッファローの希少なミルクを『さばいて』、分子レベルで乳化させたんだ」
一口食べた瞬間、ユカリの顔が幸せそうにふにゃりと緩んだ。
「んんっ……! なにこれ、雪みたいに溶ける……。直人、あーんして?」
「はいはい、あーん」
スプーンを口に運ぶたび、ユカリの頬が赤く染まっていく。
それはスイーツのせいだけじゃない。窓から差し込む月光と、静かな部屋の空気が、俺たちの距離をいつも以上に近くしていた。
甘い夜の始まり
「……ねえ、直人」
ムースを食べ終えたユカリが、トロンとした瞳で俺を見つめてきた。
彼女の体からは、無意識に漏れ出す『魅了(全性別)+500』のオーラではなく、俺だけに向けられた純粋な熱量が伝わってくる。
「異世界に来て、私、最強になっちゃったけど……。こうして直人と二人でいる時だけが、ただの『ユカリ』に戻れる気がするの」
彼女の手が、俺の首筋に回される。
「直人がいてくれれば、私、女神になんてならなくていい。ずっと、あんたの奥さんでいたい……」
『報告。直人様、現在ユカリ様の「愛のボルテージ」が計測不能なレベルに達しています。これより先は、私のナビゲーションも不要かと思われます』
(……ああ、分かってるよ。黙ってろ、ナビゲーター)
俺は頭の中の声をシャットアウトし、愛しい嫁の肩を引き寄せた。
最強の嫁も、今日はただの可愛い女性だ。
「ユカリ。異世界でもどこでも、俺がずっとお前の胃袋と……お前自身を支えるよ」
俺たちは吸い寄せられるように唇を重ねた。
外では魔王がカレーのスパイスを研究し、帝国が陰謀を巡らせているかもしれないが、この寝室だけは世界で一番甘い時間が流れている。
「……直人、好きよ」
「俺もだ、ユカリ」
夜はまだ、始まったばかりだ。




