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貧乏辺境貴族令嬢の契約結婚から始まる事件簿  作者: 水海雫
第四章 後継者

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地ならし

重い瞼が開く。

初めにしたのは薄暗い影だった。


「ここは?」



周りを見渡す。

隣にはヴァンが私と同じで縛られていた。


「ヴァン、起きて」


私の声に反応して瞼がうっすらと開いていく。


「………ここは?」

「分かりません」


どこかの建物の中のようだ。

ここは埃が舞っており匂いはカビ臭い。


「無人の空き家かもしれません」

「ええ、その通りです」


暗闇から声がした。

暗闇の中から一人の女性が姿を現す。


「あなたは?」 

「あら、分かってるのでしょう?」


彼女は不気味に笑う。


「彼の意志を継ぐものですね?」

「ええ」

「なぜこんなことを?」


私はできる限り目を鋭くして問う。


「ふふ、そんなに警戒しなくてもいいですよ?どうもしませんから」

「どの口が言ってる。現に拉致されてるぞ?」

「手荒になったのは謝りますがあくまで危害を加える気はありません」


彼女は私たちの周りを回る。

まるで星のように。


「何が目的だ?」

「宣戦布告ですよ」

「宣戦布告?」

「ええ、これから新たな革命を起こします」


彼女高らかに告げる。


「あの人の意思のもと新たな風が吹くのです!」


狂人。


そんな言葉が浮かび上がる。


「次は何をしようというのですか?」

「それはあなたが考えることです。そうでしょ?」


この感じ………


彼女は再現しようとしている。

彼と私たちの関係を。


「そんな真似をしても彼は生き返りますせんよ」

「ふふ、ははははは!」



彼女は肩を振るわせ笑う。


「あの方は死んでいません!」

「狂信者め…………」


目の焦点は合ってない。

しかし、彼女はただ笑う。


「あの子に色々話させたのは勝負のためですか?」


「フェアでなくてはいけませんからね」

「ご丁寧だな?」

「あの方ならそうしますから」


どこまでも彼のコピーを演じる気のようだ。


「彼は自分の意思を確かめるための行為だった」


しかし、彼女は………


「あなたのやってることはただのテロですよ?」

「貴方などに理解していただこうとは思っていません。私の意思を理解できるのはあの方のみですから」

「そうですか………可哀想な人ですね?」

「世界が変わればそんな戯言など言えなくなってますよ」


女は闇に徐々に消えていく。


「私の名前はサファイアどうか捕まえてみてください。楽しみにしてますよ?」


そう言って女は暗闇の中に消える。


「サファイア………」


宝石言葉は「慈愛」「誠実」「忠実」「真実」「徳望」


彼女はおそらく忠実とでもいうのだろう。


「奥様!旦那様!」


扉が開きそこからフランが入ってくる。


「フランどうやってこの場所が?」

「これが馬車に」


そう言って見せてくれたのは一枚の紙切れ。


そこには私たちの現在地が書かれていた。


「計算済みらしいな?」

「ええ」


彼女は本気だ。

新聞での世の中の真実を提示。

これは何を意味するのか?

貴族と庶民との話だ。


「貴族の牽制。市民への真実提供………」


前のようなテロ行為を起こす気なのだろうか?

いやそれにしては遠回りすぎる。


何か見落としている?


「どうしたリア?」


「私は何か見落としてるのかもしれません」


「見落とし?」


「はい、彼らは何を目的にしてるか……」


彼らは決して意味のない行為などしない。


何か明確な考えがあるはず。


「地ならし…………とかな」


「地ならし?」


「ああ、なんとなくだけど出たんだ。頭に」


地ならし…………


平にする………


!?


「なるほど…………」

「何かわかったのか?」

「はい、さすがヴァンです」


「役に立ったのか?」

「ええ、おおいに」


彼らはする気なのだ。


貴族と庶民での衝突を。


そして、均衡を保つ。


あの学校の一件と同じように。


ーー市民と貴族との地ならしを。
















読んでいただき、ありがとうございます。

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