第34話 天空からの招待状
果てしなく広がる白銀の雲海——その雲を突き抜け、蒼穹の真っ只中に浮かび上がる浮遊国家が存在する。
古代の地脈結晶が放つ神秘的な光と、雲間から射し込む陽光に照らされたその空中国家は、地上のあらゆる大国や権力の干渉を寄せ付けぬ絶対聖域として空に輝いていた。
——天空魔術中立国『アルティリス』。
そしてその国家の中央に、天を穿つように立ち聳える一筋の巨大な塔。
白亜の魔導合金と高純度結晶ガラスで組み上げられた幾何学的な巨塔こそが、世界最高峰の叡智と才能が集う場所——天空魔導学院『ステラリア』である。
世界の頂点たるその学院の中枢、万魔端末や立体魔術映像がゆらめく国家最高法務・教育省の特待選考局。
静寂が満ちる室内に、突如として甲高い警告音が鳴り響いた。
「な……なんだ!? 一級警戒通信……いや、神代自動検知システムからの緊急割り込み通信……!?」
端末の前に座っていた担当職員が、驚愕のあまり椅子を鳴らして立ち上がる。
モニターに表示されたのは、地上の——『オルディニア王国』の首都にある『聖輪天環教』のセリオン大聖堂で執り行われている『適性鑑別の儀』からのリアルタイム魔力測定データであった。
そこに刻まれた文字列を目にした瞬間、職員の顔から一瞬で血の気が引いた。
【測定対象:エレノア・セルヴィス】
【氷属性魔法:測定上限超越(Sランク)】
【土属性魔法:測定上限超越(Sランク)】
【総合評価:判定不能(規格外・X級)】
「なっ…!? 氷と土の双方で測定上限超越(Sランク)……!? 判定不能のX級だと……!?」
騒然となるオフィスの中、奧の重厚な執務室から歩み出てきた人事総長が、鋭い眼差しでモニターを凝視する。
「ただちに教理定款に基づき、大聖堂地下の『神代環理機構』へ連絡を取れ! 『古代転移陣』の即時開放要請と……そのエレノア・セルヴィス令嬢へ、我が『ステラリア』からの特待生招待状を最優先で発行するのだ!」
「あ、総長! 申し添えますと、彼女には一歳上の姉……同じく氷属性の『Aランク』を保持するクラリス・セルヴィスがおります!」
「なに……? Aランクの姉だと?」
「ええ。地元では『氷華の姫君』と噂される至高の器……。エレノア令嬢単独での引き抜きはセルヴィス伯爵家や王国との摩擦を生む恐れがありますが、姉のクラリス令嬢も特待枠として同時に招集すれば、我が学院の威信を高める絶好の『広告塔』にもなります!」
「……フッ、素晴らしい提案だ。決定だ! セルヴィス伯爵家の至宝たる『氷華の姉妹』双方に特待生招待状を発行せよ!」




