第7話 半年後に領地没収!?
「社長ー!」
翌朝。
パンプが大慌てで屋敷の廊下を走ってきた。
「大変!」
「どうした?」
「鳥さん!」
「鳥?」
「来た!」
パンプの肩には、一羽の黒い伝書コウモリが止まっていた。
アルがすぐに気付き、小さくため息をつく。
「王都の伝書魔獣か……。」
「知ってるんですか?」
「ああ。貴族へ命令書を運ぶ使いだ。」
嫌な予感しかしない。
ヨイはコウモリの足に結ばれた封筒を外した。
赤い封蝋。
王家の紋章。
「ずいぶん偉いところからだな。」
封を切り、中の羊皮紙を広げる。
そこには、達筆な文字が並んでいた。
フォースター領主ヨイ・フォースターへ。
ゴーストタウン領は長年にわたり人口増加、税収ともに著しく低迷している。
よって半年後の領地審査において改善が認められなければ、領地を王家へ返還するものとする。
なお、住民保護のため、現在居住する魔物および精霊は討伐対象となる場合がある。
「…………。」
部屋が静まり返った。
パンプは内容が分からず首をかしげる。
「社長?」
ココも不安そうだ。
「どうしたの?」
アルだけは目を閉じた。
「……来たか。」
「知ってたんですか?」
「いつかは、と思っていた。」
アルは静かにうなずく。
「この街は何十年も放置されている。」
「王都から見れば、価値のない土地だ。」
「だから……。」
ヨイは最後の一文を見つめた。
『討伐対象』
その四文字が胸に重くのしかかる。
パンプが服を引っ張る。
「討伐って?」
「……。」
ヨイは答えられなかった。
代わりにアルが優しく説明する。
「人間の騎士が来る。」
「うん。」
「私たちを追い出す。」
「追い出す?」
「抵抗すれば……。」
アルはそこで言葉を切った。
パンプの顔から笑顔が消える。
ココも青ざめていた。
「そんな……。」
「また……おうちなくなるの?」
その一言で、ヨイは初めて知った。
「また?」
アルは小さくうなずく。
「昔、この街には多くの住民がいた。」
「だが病と魔物災害で皆いなくなった。」
「残された私たちは……。」
「呪われた存在として恐れられた。」
「だから誰も帰ってこなかった。」
パンプは小さく拳を握る。
「やっと社長が来たのに……。」
ココも涙ぐんでいる。
「また一人ぼっち……?」
その姿を見て、ヨイはゆっくりと羊皮紙をたたんだ。
「なるほど。」
静かな声だった。
アルが顔を上げる。
「社長?」
ヨイはにやりと笑う。
「半年あるんだろ?」
「……え?」
「だったら十分だ。」
「十分?」
「半年で、この街を世界一の観光地にすればいい。」
パンプが目をぱちぱちさせる。
「観光地?」
「人がいっぱい来れば。」
「税金も増える。」
「お店もできる。」
「住民も増える。」
「誰も文句は言えない。」
アルは思わず苦笑した。
「普通は半年では無理だ。」
「普通ならね。」
ヨイは胸を張る。
「でも俺は普通じゃない。」
それは自慢でも何でもない。
事実だった。
文化祭では一週間で巨大なお化け屋敷を作った。
リアル脱出ゲームも企画した。
イベント運営なら誰にも負けない。
「半年もあれば十分だ。」
「社長……。」
パンプの目に少しずつ光が戻る。
「本当に?」
「もちろん。」
ヨイはパンプの頭をぽんと叩いた。
「約束しただろ。」
「君たちが主役の街を作るって。」
「……うん!」
「俺は約束は守る。」
その言葉に、ココも涙をぬぐった。
「私も頑張ります!」
「ぼくも!」
「私も協力しよう。」
アルも静かにうなずく。
「よし!」
ヨイはテーブルいっぱいに大きな紙を広げた。
「作戦会議だ!」
パンプが身を乗り出す。
「何するの?」
ヨイは炭で大きく円を描いた。
そして、その真ん中に一言。
『ハロウィン』
「これが、この街を救う切り札だ。」
パンプもココも、そしてアルも、その見慣れない文字を不思議そうに見つめる。
「ハロ……ウィン?」
ヨイは満面の笑みを浮かべた。
「世界一楽しいお祭りの始まりだ!」
その瞬間、ゴーストタウンの未来は動き始めた。
半年後の運命を変えるために。




