第49話 黒月会の正体!? ハロウィンを狙った黒幕
「黒月会……?」
ヨイは聞き慣れない名前を繰り返した。
さっきまで歓声に包まれていた広場が、再び静かになる。
グラハムも険しい表情を浮かべていた。
「その名前を知っているのか?」
騎士に尋ねる。
「はい。正確には、古い記録の中でしか見たことがありません。」
騎士は黒い魔石を見つめた。
「黒月会は、数十年前に解散したとされています。」
「解散した組織が、どうして今になって?」
ルミナが尋ねる。
「分かりません。」
「でも、これが黒月会のものなら……。」
グラハムは魔石を慎重に布で包んだ。
「誰かが、意図的にこの祭りを狙ったことになる。」
ヨイは黙っていた。
街を見る。
壊れた魔法装置。
倒れた巨大カボチャ。
避難している観光客。
そして――。
不安そうにこちらを見ているゴーストたち。
「……。」
ヨイは拳を握った。
「せっかく、ここまで来たのに。」
ルミナが隣に立つ。
「ヨイ……。」
「この街は、誰かを傷つけるために作ったんじゃない。」
「分かってるわ。」
「みんなで笑うために作った。」
ヨイは顔を上げた。
「だから――。」
「黒月会が何を考えてるのか、調べよう。」
グラハムが頷く。
「私も協力する。」
ヨイは驚いた。
「本当に?」
「ああ。」
グラハムは周囲を見る。
「私はこの街を危険だと思っていた。」
「だが、今日分かった。」
「危険なのは――。」
グラハムは黒い魔石を握る。
「この街ではない。」
「この街を利用しようとする者だ。」
「……。」
ヨイは笑った。
「ありがとうございます。」
その時。
パンプが駆け寄ってきた。
「ヨイ!」
「どうした?」
「大変!」
「何が?」
パンプが巨大カボチャを指差す。
「これ!」
「……?」
ヨイが近づく。
すると。
巨大カボチャの表面に――。
小さな穴が開いていた。
「この中、まだ何かあるよ。」
「え?」
ヨイが手を入れる。
ごそごそ。
そして。
「……これは?」
取り出したのは、小さな黒い箱だった。
表面には、三日月のような紋章。
「黒月会……。」
ルミナが呟く。
ヨイが箱を開ける。
中には一枚の紙が入っていた。
そこには――。
『第一段階、完了』
とだけ書かれていた。
「……。」
ヨイの顔から笑顔が消える。
「第一段階?」
グラハムが紙を受け取る。
「つまり……。」
「まだ何かするつもりだったということか。」
「そういうことになる。」
セドリックも眉をひそめた。
「ですが、何を?」
ヨイは考える。
そして。
「分からない。」
「でも――。」
ヨイは紙を握りしめる。
「まだ終わってない。」
その時だった。
「ヨイ!」
エリシアが駆け寄ってきた。
「大丈夫!?」
「殿下。」
「怪我はない?」
「はい。」
ヨイは笑った。
「みんな無事です。」
エリシアはほっとしたように胸を撫で下ろす。
「よかった……。」
そして。
「ねえ。」
「はい?」
「この祭り。」
エリシアは周囲を見る。
壊れた装置。
散らばったランタン。
それでも片付けを始めている人々。
「中止しないわよね?」
ヨイは一瞬、目を丸くした。
「……。」
そして。
にっと笑う。
「もちろん。」
「え?」
ルミナが驚く。
「まだ祭りの途中です。」
ヨイは広場を見る。
「みんな、ここまで楽しみに来てくれた。」
「それに――。」
ヨイは倒れている巨大カボチャを見る。
「こんなに大きなカボチャ、せっかくあるんだ。」
「……。」
「使わないともったいない。」
ルミナが呆れる。
「まさか……。」
ヨイは拳を握った。
「巨大パンプキンパイを作る!」
「やっぱり!」
パンプが大喜びする。
「やろう!」
ココも手を上げる。
「私も手伝う!」
アルも笑う。
「ならば、空から小麦粉を運ぼう。」
「それはやめて!」
ルミナが叫んだ。
「街中が真っ白になるわ!」
「冗談だ。」
「あなた、最近冗談が分かりにくいのよ!」
みんなが笑う。
そして。
再び祭りが始まった。
巨大カボチャは切り分けられ――。
大鍋で煮込まれ。
甘く味付けされ。
巨大なパンプキンパイへと姿を変えていく。
「大きい!」
「これ、何人分?」
「五千人でも足りるかな?」
「追加で作ればいい!」
広場には再び笑い声が戻ってきた。
グラハムはその様子を見ていた。
「……。」
セドリックが隣に立つ。
「どうです?」
「何がだ?」
「この街は危険ですか?」
グラハムは少し黙ってから――。
首を横に振った。
「いや。」
「むしろ――。」
グラハムは笑った。
「人を笑顔にする力がある。」
そして。
彼は手帳を開いた。
今日の調査結果を書き始める。
『ハロウィン・タウン。』
『危険性――低。』
『住民――人間、ゴースト、魔物が共存。』
『治安――良好。』
『観光価値――極めて高い。』
そして最後に。
『王国公認観光地として認可することを強く推奨する。』
ペンを置く。
「これでいい。」
その頃。
ヨイは完成した巨大パンプキンパイを見ていた。
「できた!」
「わあ……!」
観客から歓声が上がる。
巨大なパイが切り分けられ、一人一人に配られていく。
エリシアも一口食べる。
「……美味しい。」
国王も笑う。
「これは見事だ。」
パンプは大喜び。
「ぼくが作った!」
「パンプ、混ぜただけでしょう?」
ルミナが笑う。
「混ぜるのも大事!」
ココも笑う。
「そうだよ!」
夜。
最後のランタンが空へ飛んでいく。
オレンジ色の光が、夜空を埋め尽くした。
その光景を見ながら。
ヨイは呟いた。
「……終わったな。」
ルミナが隣に立つ。
「ええ。」
「いろいろあったけど。」
「うん。」
「楽しかった。」
ヨイは笑う。
「来年はもっとすごい祭りにしよう。」
「もう来年の話?」
「当然。」
ルミナも笑った。
「あなたらしいわ。」
その翌朝。
王都から正式な書状が届いた。
封蝋には――。
王家の紋章。
ヨイが封を開く。
そして。
「……。」
「どうだった?」
ルミナが尋ねる。
ヨイは手紙を掲げた。
「決まった。」
「何が?」
ヨイは笑った。
「この街――。」
「王国公認の観光地になる。」
「……!」
ルミナの目が大きくなる。
「本当に!?」
「うん!」
パンプが叫ぶ。
「やったー!」
ココも飛び跳ねる。
アルが空へ飛び上がる。
ゴーストたちが歓声を上げる。
そして。
ヨイは街を見渡した。
かつて。
「ゴーストタウン」と呼ばれていた場所。
今では――。
たくさんの人が訪れ。
笑い声が響き。
魔物たちが暮らし。
人間とゴーストが一緒に働いている。
「……ここが。」
ヨイは笑う。
「俺たちの街だ。」
しかし。
書状の最後には――。
もう一つ、重要な一文が書かれていた。
『なお、王国公認に伴い――。』
『来年度より、国王陛列席のもと、正式な国家観光祭としてハロウィン・フェスティバルを開催する。』
ヨイは目を丸くした。
「……国家観光祭?」
ルミナが笑う。
「つまり――。」
「来年は、もっと大変ってことね。」
ヨイはしばらく沈黙し――。
やがて。
満面の笑みを浮かべた。
「最高じゃん。」
「来年は――。」
「もっと、もっと面白いハロウィンにしよう!」
こうして。
ゴーストタウンは終わった。
そして――。
ハロウィン・タウンが始まった。




