第50話 世界一のハロウィン・タウン! みんなで作った最高の街
翌朝。
ハロウィン・タウンには、いつもと少し違う朝が訪れていた。
「……静かだな。」
ヨイは街の中央広場に立っていた。
昨日まで、たくさんの人で埋め尽くされていた場所。
今は、祭りの片付けをするゴーストたちが忙しそうに動いている。
「こっちのランタン、倉庫に戻して!」
「了解!」
「屋台のテーブルは?」
「洗ってから片付けるよ!」
「昨日のクッキー、まだある?」
「食べるな!」
パンプの声が響く。
ヨイは思わず笑った。
「いつもの街に戻ったな。」
「そうね。」
隣にルミナが立つ。
「でも――。」
ルミナは街を見渡した。
「前とは全然違う。」
ヨイも頷く。
少し前まで。
ここは「ゴーストタウン」と呼ばれていた。
誰も近寄らない。
誰も住みたがらない。
地図の片隅に忘れられたような場所。
それが今では――。
巨大なハロウィン・ゲート。
色鮮やかなランタン。
綺麗に整備された道。
お化け屋敷。
カフェ。
畑。
広場。
そして、たくさんの家。
「……。」
ヨイは胸の奥が熱くなるのを感じた。
「最初はさ。」
「うん?」
「ただ、お化け屋敷をやりたかっただけなんだよな。」
ルミナが笑う。
「それが、どうしてこうなったのかしら。」
「俺にも分からない。」
「あなたらしいわ。」
そこへ。
「ヨイー!」
パンプが走ってきた。
「お客さん!」
「え?」
「まだいるよ!」
「まだ?」
ヨイが街の入口を見る。
そこには――。
数人の観光客がいた。
「昨日来たんだけど、もう一度遊びたい!」
「お化け屋敷、最高だった!」
「来年も絶対来ます!」
「この街、大好き!」
ヨイは目を丸くした。
「……。」
そして。
笑った。
「ありがとう!」
観光客たちが手を振る。
「また来るよ!」
馬車が街を出ていく。
その姿を見送りながら、ヨイは呟いた。
「また来る、か。」
ルミナが頷く。
「それって、観光地として一番嬉しい言葉じゃない?」
「そうだな。」
その時。
街の中央に設置された掲示板に、新しい紙が貼られた。
ヨイが近づく。
『王国正式発表』
『ハロウィン・タウンを王国公認観光地として認定する』
その下には、さらに――。
『毎年十月、国家観光祭としてハロウィン・フェスティバルを開催する』
「……。」
ヨイはしばらく、その文章を見つめていた。
そして。
「やった……。」
小さく呟いた。
「本当に、やったんだ。」
ルミナが笑う。
「ええ。」
パンプが叫ぶ。
「やったー!」
ココも両手を上げる。
「私たちの街!」
アルは空へ飛び上がる。
「ハロウィン・タウン万歳!」
ゴーストたちが次々に集まってくる。
「万歳!」
「万歳!」
「これからもよろしく!」
ヨイはみんなの顔を見る。
最初に出会った頃とは違う。
パンプも。
ココも。
アルも。
ルナも。
みんなが、この街を自分の場所だと思っている。
そして。
ヨイは気づいた。
自分も同じだった。
ここはもう――。
転生して与えられた土地ではない。
自分たちで作った場所。
自分たちの街。
「みんな。」
ヨイが声を上げる。
「この街は、これからもっと大きくなる。」
「でも。」
「大事なことは変えない。」
「怖いものも。」
「可愛いものも。」
「美味しいものも。」
「全部一緒に楽しめる街にする。」
「そして――。」
ヨイは笑った。
「誰が来ても、最後には笑顔で帰れる街にしよう。」
「おー!」
大きな歓声が上がった。
その後。
王都では――。
ハロウィンの人気が爆発的に広がっていた。
「ハロウィンって知ってる?」
「もちろん!」
「仮装するんだろ?」
「お菓子ももらえるらしいぞ。」
「ゴーストと一緒に祭りをするんだって。」
「行ってみたい!」
子供たちはカボチャのお面を作る。
商人たちはハロウィン商品を売り始める。
菓子職人はパンプキンパイを研究する。
魔法職人はランタンを改良する。
そして。
王都の店先にも――。
オレンジ色のカボチャが並び始めた。
ハロウィンは。
この世界に少しずつ根付き始めていた。
数週間後。
ヨイは街の入口に立っていた。
新しく設置された看板を見上げる。
そこには、大きくこう書かれている。
『ようこそ!』
『王国公認観光地』
『ハロウィン・タウン』
そして、その下には――。
『笑って、驚いて、楽しもう!』
ヨイは満足そうに頷いた。
「うん。」
「いい看板だ。」
ルミナが隣から言う。
「ねえ、ヨイ。」
「ん?」
「一つ聞きたいんだけど。」
「何?」
「来年の計画。」
「もう決めてる。」
「……やっぱり。」
ヨイは懐から分厚い計画書を取り出した。
「来年は――。」
「魔法花火!」
「仮装コンテスト!」
「ゴースト劇場!」
「巨大迷路!」
「夜のランタン船!」
「そして――。」
「世界最大のパンプキンパイ!」
ルミナは頭を抱えた。
「……休むっていう選択肢は?」
「ない。」
「でしょうね。」
二人は笑った。
その後ろでは。
パンプが叫んでいる。
「ヨイ! 来年はぼくの新しいお化け屋敷も作って!」
「もちろん!」
ココも手を上げる。
「私も新しい衣装が欲しい!」
「作ろう!」
アルも言う。
「夜空の演出をさらに豪華にしたい。」
「任せた!」
ルナが笑う。
「私も魔法をもっと練習する!」
「よろしく!」
みんなが未来の話をしている。
その姿を見ながら。
ヨイは空を見上げた。
前世では。
ただの高校生だった。
お化け屋敷が好きで。
イベントが好きで。
人を驚かせるのが好きだった。
それだけだった。
けれど。
転生したこの世界で――。
自分の好きなことを。
自分だけで終わらせなかった。
ゴーストたちと出会い。
ルミナと出会い。
たくさんの人と出会った。
そして。
何もなかったゴーストタウンに――。
笑顔が生まれた。
「……。」
ヨイは静かに笑う。
「転生してよかったな。」
ルミナが聞き返す。
「何か言った?」
「いや。」
ヨイは首を振る。
「なんでもない。」
その瞬間。
街の中央にある大時計が鳴った。
ぽーん。
ぽーん。
街のランタンが一斉に灯る。
オレンジ色の光が、街を包んでいく。
パンプが叫ぶ。
「ハロウィン・タウン!」
ココが続く。
「最高!」
アルが笑う。
「また来年!」
そして。
みんなが声を合わせた。
「ハッピー・ハロウィン!」
夜空には――。
大きな満月。
その下で。
ゴーストと人間と魔物が暮らす街は、いつまでも明るく輝いていた。
かつては誰も近づかなかった。
寂れたゴーストタウン。
それは今――。
世界中から人が訪れる、最高に楽しくて、ちょっぴり怖い観光名所になった。
そして、この街の物語は――。
まだ始まったばかりだった。
完
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!
「異世界転生したら学園となりのゴーストタウンでした~怖がらない俺がハロウィンの街を作ったら世界一の観光地になりました~」、いかがでしたでしょうか。
怖がりな住人たちと、ホラーをエンタメとして楽しんでしまう主人公が織りなすドタバタ開拓劇をお届けしてきましたが、楽しんでいただけたなら幸いです。
そして……! 本編はここでいったん幕となりますが、【10月31日(金)〜 11月3日(月)】の4日間、ハロウィン本番を記念した短期連載(全8話・毎日7時/20時更新)を公開いたします!
番外編エピソードをお届けする予定ですので、ぜひお祭り気分で一緒に楽しんでいただけると嬉しいです!
引き続き、応援よろしくお願いいたします!




