第47話 反対派登場!? ハロウィンを認めさせろ!
「ハロウィンを、王国の正式な祭りにする?」
王都。
大きな会議室で、一人の男が声を上げていた。
「冗談ではない!」
机を強く叩く。
彼の名前は――。
グラハム・ベルン。
王都の治安を担当する上級官僚だった。
「ゴースト!」
「ゾンビ!」
「魔物!」
「そんなものが街中を歩き回る祭りを、国が認めるというのか!」
会議室がざわめく。
「しかも、五千人規模の観光客を集めるだと?」
「事故が起きたら誰が責任を取る!」
その場にいたセドリックは静かに答えた。
「安全対策については、十分な確認を行っています。」
「十分?」
グラハムが睨む。
「昨日、巨大カボチャが暴走したそうじゃないか!」
「……。」
セドリックは黙る。
「それを『イベント』として利用したとも聞いている。」
「事実です。」
「ならば危険ではないか!」
「ですが、負傷者は出ていません。」
「結果論だ!」
会議室に怒声が響く。
「魔物は魔物だ!」
「人間と同じように扱うなど、私は認められん!」
セドリックの表情が少し険しくなる。
「では、彼らが何をしたかをご存じですか?」
「何?」
「街を掃除し、観光客を案内し、料理を作り、子供たちを楽しませた。」
「……。」
「彼らは、誰かを傷つけるためではなく――。」
セドリックは言葉を続ける。
「この街で暮らすために働いています。」
グラハムは鼻を鳴らした。
「それでも信用できん。」
そして。
「正式認可を出すなら――。」
「条件をつけるべきだ。」
「条件?」
セドリックが聞く。
「ハロウィン・フェスティバル当日。」
「私が直接、現地を確認する。」
「そして――。」
グラハムは冷たく笑った。
「危険だと判断したら、その場で中止させる。」
その知らせが――。
翌日、ハロウィン・タウンに届いた。
「……。」
ヨイは手紙を読んでいた。
「反対派?」
ルミナが尋ねる。
「うん。」
「やっぱり出てきたのね。」
「まあ、当然だと思う。」
ヨイは手紙を置く。
「今まで誰も知らなかった祭りだ。」
「魔物も参加してる。」
「怖いと思う人がいるのも分かる。」
ルミナは少し驚いた。
「珍しく冷静ね。」
「俺だって考える時は考える。」
「失礼したわ。」
「でも――。」
ヨイは笑った。
「だったら、見てもらえばいい。」
「何を?」
「この街を。」
ヨイはゴーストたちを見る。
パンプ。
ココ。
アル。
ルナ。
「俺たちが何をしてるのか。」
「どんな街なのか。」
「それを全部見てもらう。」
ルミナは頷いた。
「そうね。」
「言葉で説得するより、ずっといい。」
その日の午後。
街の中央広場に、ゴーストも魔物も人間も集まった。
ヨイが言う。
「王都には、俺たちを危険だと思っている人がいる。」
ざわざわ。
「でも、それは仕方ない。」
「まだ俺たちは、知られていないから。」
ヨイはみんなを見る。
「だから。」
「今度のフェスティバルで――。」
「俺たちのことを知ってもらおう。」
パンプが拳を上げる。
「ぼく、頑張る!」
ココも続く。
「私も!」
アルが頷く。
「任せてくれ。」
ゴーストたちも声を上げる。
「やろう!」
「頑張ろう!」
「この街を見てもらおう!」
ルミナはその光景を見ながら微笑んだ。
「……もう、この街はゴーストタウンじゃないわね。」
「うん。」
ヨイも笑った。
「ここは――。」
「ハロウィン・タウンだ。」
そして。
フェスティバル当日。
王都から、続々と馬車がやって来た。
一台。
十台。
百台。
街道が人でいっぱいになる。
「すごい……。」
ヨイが呟く。
「本当に五千人来るかもしれないわ。」
ルミナも驚いていた。
街は人でいっぱいだった。
「ハロウィンだ!」
「すごい!」
「カボチャの門!」
「ゴーストがいる!」
「お化け屋敷はどこ!?」
子供たちが走り回る。
そして。
王都の調査団も到着した。
その中に――。
グラハムもいた。
「……。」
彼は険しい顔で街を見る。
「本当に、これだけの人間を集めたのか。」
「はい。」
セドリックが答える。
「馬鹿げている。」
「そうでしょうか?」
「事故が起きれば、これだけの人間が巻き込まれる。」
「だからこそ、安全管理を徹底しています。」
グラハムは返事をしなかった。
その時。
小さな子供が転んだ。
「うえーん!」
「大丈夫?」
近くにいたココが駆け寄る。
「痛かったね。」
ココは子供の膝についた土を払う。
すると。
「……ゾンビのお姉ちゃん?」
「うん。」
「怖くないの?」
「怖い?」
ココは首を傾げる。
「私、怖い?」
子供は少し考える。
そして。
「かわいい!」
「……!」
ココの顔が赤くなる。
「ありがとう。」
子供は笑って走っていった。
その光景を――。
グラハムが見ていた。
「……。」
彼は何も言わない。
ただ、手帳に何かを書き込んだ。
一方。
ステージではヨイがマイクを握っていた。
「皆さん!」
歓声が上がる。
「今日は、ハロウィン・タウン最大の祭りです!」
「そして――。」
ヨイはグラハムを見る。
「この街を初めて知る人もたくさんいます。」
「だから、今日は思いっきり楽しんでください!」
音楽が鳴り始める。
パレードが始まった。
ゴースト。
ゾンビ。
魔物。
人間。
みんなが一緒に歩く。
グラハムは腕を組んだまま見ていた。
「……。」
その時。
一人の小さな女の子が、グラハムの前にやって来た。
「おじさん。」
「……何だ?」
「お菓子、いる?」
「……。」
女の子は小さなカボチャクッキーを差し出した。
「ハロウィンだから!」
グラハムはしばらくクッキーを見つめる。
そして。
「……ありがとう。」
受け取った。
女の子は笑って走っていく。
グラハムはクッキーを見る。
「……。」
その顔から、ほんの少しだけ険しさが消えた。
しかし。
その直後。
街の中央から――。
「ドン!」
大きな音が響いた。
全員が振り返る。
「何!?」
「事故!?」
ヨイも走り出す。
「ルミナ!」
「分かってる!」
そして見えたのは――。
巨大な魔法装置。
その装置から、黒い煙が噴き出していた。
「……。」
ヨイの顔から笑顔が消える。
「これ、俺たちが作った装置じゃない。」
「え?」
ルミナが驚く。
「誰かが――。」
ヨイは装置を見る。
「何かを仕掛けた?」
ハロウィン・フェスティバル最大の日。
ここに来て――。
新たな事件が始まろうとしていた。
そしてグラハムが叫ぶ。
「全員、止まれ!」
「祭りを中止する!」
会場が静まり返る。




