第43話 観光地なのに道がない!? ハロウィン・ロードを作ろう!
「……道がない。」
翌朝。
ヨイは街の外に立っていた。
目の前には、草が生い茂った細い道。
その先にあるのは――。
ハロウィン・タウン。
しかし、王都へ続く大通りからは、かなり離れている。
「正確には、道はあります。」
セドリックが眼鏡を押し上げる。
「ただし、観光客が歩いて来られる状態ではありません。」
「昨日、馬車で来た時も大変だったわね。」
ルミナが頷く。
「途中で何度も揺れたし。」
「道幅も狭い。」
「案内板もありません。」
セドリックが淡々と指摘していく。
「夜になれば、さらに危険です。」
ヨイは腕を組む。
「……。」
「これは確かに問題だ。」
パンプが草むらから顔を出す。
「じゃあ、道を作る?」
「そうだな。」
ヨイの目が輝く。
「作ろう!」
ルミナが嫌な予感を覚える。
「……普通の道よね?」
「もちろん。」
「本当に?」
「たぶん。」
「たぶんって何よ!」
ヨイは笑いながら地図を広げた。
「ただの道じゃ面白くない。」
「観光客が街に着くまでの時間も、ハロウィンにする。」
セドリックが興味深そうに聞く。
「具体的には?」
「ハロウィン・ロードです。」
「……。」
「王都から街までの道を、ハロウィン仕様にします。」
ヨイは地図に線を引いていく。
「入口に巨大カボチャの門。」
「途中にはランタン。」
「ゴーストの案内板。」
「休憩所にはパンプキンジュース。」
「夜は魔法灯でライトアップ。」
パンプが手を上げる。
「ぼく、案内する!」
「お願いする。」
ココも手を上げる。
「私もやりたい!」
「もちろん。」
アルが空を見上げる。
「ならば、上空からの案内も可能だ。」
「いいな。」
ルミナは地図を見ながら呟く。
「……意外と現実的ね。」
「だろ?」
「でも、これだけの道を整備するには時間がかかるわ。」
「今日中にやる。」
「無理よ!」
「じゃあ、魔法を使おう。」
「それを先に言いなさい!」
ヨイは笑った。
「よし!」
「ハロウィン・ロード建設開始!」
「おー!」
ゴーストたちが一斉に動き出す。
木材を運ぶ。
石を並べる。
雑草を刈る。
カボチャを植える。
学園の生徒たちも手伝い始めた。
「こっちに看板!」
「ランタンはここ!」
「道幅はもう少し広げよう!」
セドリックはその様子を見ながら、また手帳を開く。
「……。」
『住民・学生・魔物が共同で道路整備。』
「これは……。」
セドリックは小さく笑った。
「本当に変わった街だ。」
その頃。
ヨイは道の中央に立っていた。
「ここだ。」
「ルミナ!」
「何?」
「この辺りに魔法灯を設置したい。」
「分かった。」
ルナがやってくる。
「私がやる。」
「できる?」
「うん。」
ルナが杖を振る。
ぽうっ。
地面から小さな光の球が浮かび上がった。
一つ。
二つ。
三つ。
光の球が道に沿って並んでいく。
「すごい……。」
セドリックが呟く。
「これなら夜でも安全ですね。」
「しかも。」
ルナが杖をもう一度振る。
光の球が――。
カボチャの形になる。
「かわいい!」
ココが喜ぶ。
「いいな!」
ヨイも大喜びする。
「これ、絶対人気になる!」
「ただの街灯じゃない。」
「歩いているだけでハロウィンを感じられる。」
ルミナも頷いた。
「確かに。」
そして。
昼過ぎ。
ハロウィン・ロードの工事は順調に進んだ。
だが。
一つだけ問題があった。
「……。」
ヨイは完成した道を見つめる。
「何か足りない。」
「十分だと思うけど?」
ルミナが言う。
「もっとこう――。」
ヨイは腕を組む。
「『ここから別世界が始まる』って感じが欲しい。」
「別世界?」
「そう。」
ヨイは考える。
そして。
「門だ。」
「門?」
「巨大なハロウィンゲートを作ろう。」
「どんな?」
「大きなカボチャを二つ。」
「その間を――。」
ヨイは空中に指で線を描く。
「ゴーストの形にする。」
「なるほど。」
ルナが頷く。
「私、作れる。」
「本当に?」
「うん。」
ルナが杖を振る。
すると。
地面から巨大なカボチャの蔓が伸び始めた。
ぐんぐん。
ぐんぐん。
二つの柱が出来上がる。
その上を蔓が絡み合う。
そして――。
巨大なゴーストの形になった。
「完成!」
パンプが叫ぶ。
「すごい!」
「大きい!」
「これは目立つな。」
セドリックも思わず見上げる。
「王都からでも見えるかもしれません。」
「それなら――。」
ヨイはカボチャの門に手を触れた。
「名前をつけよう。」
「名前?」
「うん。」
ヨイは笑う。
「ハロウィン・ゲート。」
その夜。
王都へ続く街道から――。
オレンジ色の光が見えるようになった。
街道を歩く旅人が立ち止まる。
「なんだ、あれ?」
「カボチャ?」
「向こうに街があるのか?」
「行ってみようぜ。」
一人。
また一人。
自然と人々が、ハロウィン・タウンへ向かって歩き始める。
翌朝。
セドリックがその話を聞いた。
「昨夜、街道から人が何人も来たそうです。」
「本当!?」
ヨイが喜ぶ。
「道を作っただけなのに?」
「いえ。」
セドリックは首を横に振る。
「道を作ったからではありません。」
「何が?」
「人が、あの門を見て――。」
「『行ってみたい』と思ったのです。」
ヨイは笑った。
「それって――。」
「観光地の条件、満たしてる?」
セドリックは手帳を閉じる。
「ええ。」
「かなり。」
ヨイは拳を握った。
「よし!」
その時。
街の入口から声が聞こえた。
「ヨイ!」
「ん?」
「王都から、追加の馬車が来たぞ!」
「え?」
ヨイが振り返る。
そこには――。
昨日よりも多くの馬車。
さらに。
その先頭には、王都の紋章がついた特別な馬車が一台。
セドリックの表情が変わった。
「……。」
「どうした?」
ヨイが尋ねる。
セドリックは馬車を見つめる。
「予定にはありません。」
「じゃあ、誰が?」
馬車の扉が開く。
中から現れたのは――。
王家の紋章を身につけた、一人の少女だった。
「……。」
彼女はハロウィン・タウンを見渡す。
そして。
「ここが……。」
「噂のハロウィンの街?」
ヨイは目を丸くした。
「王族……?」
セドリックが小声で答える。
「殿下です。」
「……えええ!?」
ルミナが驚く。
王都の調査だと思っていた。
しかし。
いつの間にか、この街には――。
王族まで訪れていた。
そして、その少女が最初に口にした言葉は――。
「お菓子をくれなきゃ、いたずらするわよ?」
だった。




