第39話 巨大カボチャ大暴走! ハロウィン・クエスト開始!
「逃げろー!」
「カボチャを追えー!」
「捕まえたぞ!」
「こっちは任せて!」
ハロウィン・タウンは、ものすごい騒ぎになっていた。
巨大カボチャが街を走り回る。
その後ろから、無数の小さなカボチャたちが転がっていく。
ゴロゴロゴロゴロ!
「待てー!」
パンプが追いかける。
「そっちに行ったぞ!」
ココが叫ぶ。
「任せて!」
学園の生徒たちが左右から回り込み、カボチャを追い込んでいく。
「すごい!」
「こんなイベント初めて!」
「本当に動いてる!」
観客たちは大興奮だった。
ヨイはステージの上から、その光景を見ていた。
「……。」
「どうしたの?」
ルミナが尋ねる。
「予想以上だ。」
「何が?」
「大成功してる。」
「そこ!?」
ルミナが呆れた顔をする。
「今、本物のモンスターが街を走り回ってるのよ!?」
「分かってる。」
「だったらもっと焦りなさい!」
「焦ってる。」
「全然見えないわよ!」
ヨイは笑った。
「だって、みんな笑ってる。」
街の中を走る人々。
カボチャを追いかける子供たち。
ゴーストたち。
学園の生徒たち。
みんな楽しそうだった。
「これが、ハロウィンだ。」
ヨイは呟いた。
「怖いものを、みんなで楽しむ。」
「それがハロウィン。」
ルミナはヨイを見つめる。
「……あなたって、本当にこういう時だけ頼もしいわね。」
「こういう時だけ?」
「普段から頼もしいわよ。」
「お。」
「ただし、無茶をするから差し引きゼロ。」
「厳しいなあ。」
二人が話していると――。
「ヨイ!」
ルナが走ってきた。
「どうした?」
「大変。」
ルナの顔は真剣だった。
「巨大カボチャの魔力が、さっきより強くなってる。」
「やっぱりか。」
「うん。」
ルナは巨大カボチャを見る。
「最初は、街の魔力を吸っていた。」
「でも今は――。」
「地下へ送ってる。」
「地下?」
ヨイの表情が変わる。
「何を?」
「分からない。」
「でも……。」
ルナが杖を握りしめる。
「地下の扉が、少しずつ開いてる。」
「……。」
ヨイは時計塔を見る。
「十二時まで、あとどれくらい?」
ルミナが時計を見る。
「あと三時間。」
「三時間か。」
ヨイは考える。
「だったら、それまでに巨大カボチャを止める。」
「どうやって?」
「捕まえる。」
「簡単に言うわね……。」
「でも、イベントとしてやるなら――。」
ヨイは笑った。
「参加者全員で捕まえるしかない。」
その瞬間。
ヨイはステージのマイクを握った。
「皆さん!」
街中に声が響く。
「巨大カボチャは現在、街の外へ逃げようとしています!」
「このままでは――。」
ヨイは一瞬だけ言葉を止める。
本当の危険を説明するわけにはいかない。
そこで。
「ハロウィン・クエスト、第二ステージです!」
「巨大カボチャを街の中央広場まで追い込め!」
「参加者全員で――捕獲してください!」
「おおおおお!」
歓声が上がる。
「クエスト開始!」
「捕まえろー!」
「絶対に逃がすな!」
参加者たちが一斉に走り出す。
巨大カボチャは、それを見て――。
「グオオオオオ!」
さらに速度を上げた。
ドドドドド!
「速い!」
「待てー!」
「こっちだ!」
「囲め!」
学園の生徒たちが道を塞ぐ。
しかし。
巨大カボチャは――。
ドン!
そのまま突っ込んだ。
「うわあ!」
「危ない!」
ところが。
巨大カボチャの足元から、ふわふわのゴーストたちが飛び出した。
「こっちだよ!」
「こっち!」
ゴーストたちは巨大カボチャの前を飛び回る。
巨大カボチャが追いかける。
「今だ!」
パンプが叫ぶ。
カボチャモンスターたちが一斉に飛び出した。
「えい!」
「それ!」
「こっち!」
巨大カボチャの足に蔓が絡みつく。
「止まった!」
「今よ!」
観客たちが歓声を上げる。
ヨイも走る。
「みんな、そのまま!」
「もう少し!」
「頑張れ!」
巨大カボチャが暴れる。
ブン!
蔓を振り払う。
「危ない!」
ルミナが叫ぶ。
ヨイは咄嗟にルナを抱き寄せた。
巨大な蔓が頭上を通り過ぎる。
「ヨイ!」
「大丈夫!」
「でも――!」
ヨイは立ち上がる。
巨大カボチャを見る。
そして、ふと気づいた。
「……。」
巨大カボチャの赤い目。
怒っているように見える。
しかし。
よく見ると――。
「泣いてる?」
「え?」
ルミナが見る。
巨大カボチャの目から、透明な雫が落ちていた。
ぽた。
ぽた。
「……。」
ルナが静かに呟く。
「やっぱり。」
「怖がってる。」
「何を?」
「自分が、また暴走することを。」
ヨイは巨大カボチャを見る。
「……。」
そして。
あることを思いついた。
「ルナ。」
「なに?」
「このカボチャと話せる?」
「たぶん。」
「じゃあ、やってみよう。」
ルナは巨大カボチャの前へ歩いていく。
「あなた。」
巨大カボチャが動きを止める。
「どうして暴れてるの?」
「……。」
「怖いの?」
巨大カボチャが、ゆっくり頷いた。
観客たちは、それすらも演出だと思っている。
「すごい!」
「会話してる!」
「魔法劇だ!」
しかし、ヨイたちは違う。
本物だと分かっている。
「何が怖いの?」
ルナが聞く。
巨大カボチャの口が動く。
『……また。』
『また、みんなを傷つける。』
「……。」
ルナは首を振った。
「大丈夫。」
『……本当に?』
「うん。」
ルナは笑った。
「だって、今はみんながいる。」
『……。』
「昔は、一人だった。」
「でも今は――。」
ルナは後ろを見る。
ヨイ。
ルミナ。
パンプ。
ココ。
アル。
そして、たくさんの人々。
「みんなで一緒に、ハロウィンをしてる。」
巨大カボチャの赤い目が揺れる。
『……ハロウィン。』
「そう。」
『もう一度……。』
「うん。」
『やっても……いいの?』
ルナは笑った。
「もちろん。」
その瞬間。
巨大カボチャの体から、赤い光が消えた。
代わりに――。
暖かなオレンジ色の光が広がる。
「……!」
ヨイが驚く。
「魔力が変わった。」
ルミナも目を見開く。
「暴走が止まってる?」
しかし。
次の瞬間。
ゴゴゴゴゴゴ……!
街全体が大きく揺れた。
「きゃあ!」
「何!?」
「地震!?」
ヨイが地面を見る。
「違う。」
巨大カボチャの魔力が、地下へ流れていく。
そして。
ゴーストタウン中央の地面に――。
巨大な魔法陣が浮かび上がった。
「……!」
ルナが息を呑む。
「最後の魔法が始まる。」
「何が起きる?」
ルナは震える声で答えた。
「分からない。」
「でも――。」
魔法陣の中央から、巨大な光の柱が空へ伸びる。
「きっと、この街が昔から待っていたもの。」
ヨイは光を見上げた。
そして。
「だったら――。」
「最後まで見届けよう。」
巨大な光が夜空を照らす。
観客たちは大歓声を上げた。
「すごい!」
「これが最後の演出!?」
「最高だ!」
「ハロウィン最高!」
しかし。
地下深くでは――。
封印されていた扉が、さらに大きく開いていた。
そして、その向こうに眠っていた「何か」が――。
ゆっくりと立ち上がる。
『……ようやく。』
『笑い声が戻った。』
『ならば――。』
『最後の祝祭を始めよう。』




