第38話 ハロウィン当日! 世界初の祭りが始まる
朝。
ゴーストタウンに、柔らかな光が差し込んでいた。
「……。」
ヨイは街の入口に立っていた。
目の前には、昨日まで誰も近づかなかった場所とは思えない光景が広がっている。
オレンジ色のカボチャ。
紫色のランタン。
黒い旗。
お化け屋敷。
屋台。
ゲーム広場。
そして、街の中央には巨大なステージ。
「……ついに、この日が来た。」
ヨイは小さく呟いた。
「ハロウィン当日。」
隣にはルミナが立っている。
「ここまで長かったわね。」
「うん。」
「最初は、ただのゴーストタウンだったのに。」
「今は?」
「……人が来る街。」
ヨイは笑った。
「それだけじゃない。」
「みんなが帰ってきた街だ。」
ルミナは街を見渡した。
ゴーストたちが掃除をしている。
ココは屋台の準備。
パンプは看板の最終確認。
アルはランタンの点検。
そして――。
ルナは中央広場で魔法の練習をしている。
「……。」
ルミナが少し心配そうに見る。
「ルナ、大丈夫かしら。」
「大丈夫。」
「本当に?」
「たぶん。」
「その言い方、あなたに似てきたわよ。」
「え?」
ルミナは笑った。
「冗談。」
ヨイも笑う。
その時。
街の入口から声が聞こえた。
「来たぞ!」
「人が来た!」
「いっぱい来る!」
ヨイが振り返る。
街道の向こうから――。
学園の生徒たち。
近隣の住民。
商人。
子供たち。
そして、噂を聞きつけた人々が歩いてくる。
「……。」
ヨイは息を呑んだ。
「すごい。」
「想像以上ね。」
ルミナが呟く。
「みんな、楽しみにしてたんだ。」
そして。
最初の子供が街の入口に立った。
「ここが……ハロウィンの街?」
ヨイは笑顔で迎える。
「ようこそ!」
「ハロウィン・タウンへ!」
「トリック・オア・トリート!」
パンプが飛び出した。
「お菓子をくれなきゃ、いたずらするぞ!」
「きゃー!」
子供たちが笑いながら逃げる。
「待てー!」
パンプが追いかける。
その光景を見て、ヨイは笑った。
「……始まった。」
ハロウィン・フェスティバル。
世界で初めての、本格的なハロウィンイベントが――。
ついに始まった。
「いらっしゃいませ!」
「パンプキンパイはいかがですか?」
「焼きカボチャもあります!」
屋台は大盛況。
「お化け屋敷はこちら!」
「怖いですよー!」
「本当に怖い?」
「もちろん!」
ココが胸を張る。
しかし。
「うらめしや~!」
「きゃあ!」
女の子たちが驚く。
そして。
ココが自分の足につまずいた。
「きゃっ!」
ころん。
頭がころり。
「……。」
女の子たちが固まる。
ココは慌てて頭を拾う。
「ご、ごめんなさい!」
すると――。
「かわいい!」
「かわいい!」
「ゾンビちゃん、かわいい!」
「もう一回転んで!」
「ええ!?」
ココの周りに女の子たちが集まった。
「大人気だな。」
ヨイが笑う。
ルミナも笑う。
「お化け屋敷なのに、マスコットになってるわね。」
その頃。
アルは空へ飛び上がっていた。
「ランタン、発射!」
ぱっ。
一つ。
また一つ。
色とりどりのランタンが空へ浮かぶ。
「わあああ!」
「綺麗!」
「空にカボチャが飛んでる!」
歓声が上がる。
アルは空から街を見下ろす。
「ふふ。」
「俺の出番だな。」
そして。
夕方。
ハロウィン・タウンは最高潮を迎えた。
ヨイはステージに立つ。
「みんな!」
歓声が上がる。
「今日は、この街で初めてのハロウィンです!」
「この街では――。」
ヨイはゴーストたちを見る。
「人間も!」
魔物たちを見る。
「魔物も!」
そして。
ルナを見る。
「魔女も!」
「みんなで楽しむ!」
「それが――。」
ヨイは拳を上げる。
「俺たちのハロウィンだ!」
「おおおおお!」
街中から歓声が響く。
その瞬間。
ルナが杖を振った。
ぽうっ。
街中のランタンが一斉に灯る。
オレンジ。
紫。
青。
赤。
色とりどりの光が街を包み込む。
「綺麗……。」
ルミナが呟く。
ヨイも見上げる。
「……最高だ。」
ところが。
その時だった。
ドクン。
「……。」
ヨイの笑顔が止まる。
地下から魔力が伝わってきた。
ドクン。
もう一度。
ドクン。
三度目。
「来た。」
ルナが呟く。
「……。」
ヨイは空を見上げる。
そして。
街の中央に置かれていた巨大カボチャが――。
ゆっくりと浮き上がった。
「え?」
「何?」
「カボチャが浮いてる!」
観客たちがざわめく。
巨大カボチャが空中で回転する。
ぐるぐる。
そして――。
ドン!
地面に落ちた。
「きゃあ!」
「危ない!」
ヨイが叫ぶ。
「みんな、離れて!」
しかし。
巨大カボチャは動かなかった。
「……。」
静かだった。
誰もが息を止める。
そして。
カボチャに二本の腕が生える。
さらに。
二本の足。
大きな口。
そして――。
赤い目。
「……。」
巨大カボチャが、ゆっくり立ち上がる。
観客たちが騒ぎ始める。
「本物!?」
「すごい演出!」
「こんな魔法、見たことない!」
ヨイは額に汗を浮かべる。
「……。」
ルミナが小声で聞く。
「ヨイ。」
「うん。」
「これ……演出じゃないわよね?」
ヨイは巨大カボチャを見る。
「……違う。」
その巨大カボチャが――。
大きく口を開いた。
「グオオオオオオオオッ!」
地面が揺れる。
観客から悲鳴が上がる。
しかし。
次の瞬間。
「うわあああ!」
「すごい!」
「本物みたい!」
「最高!」
観客たちから歓声が上がった。
ヨイは目を見開いた。
「……。」
ルミナも呆然とする。
「みんな……。」
「演出だと思ってる。」
ヨイは巨大カボチャを見上げた。
そして。
ニヤリ。
笑った。
「だったら――。」
「このまま行こう。」
「え?」
ヨイはマイクを握る。
「皆さん!」
観客が一斉に振り向く。
「ここからが――。」
ヨイは巨大カボチャを指差した。
「本日のスペシャルイベントです!」
「巨大カボチャ・モンスターから街を守れ!」
「参加者全員で挑む――!」
「ハロウィン・クエストだ!」
「うおおおおおお!」
街中が歓声に包まれる。
巨大カボチャが――。
ドン!
一歩踏み出した。
そして。
その足元から――。
小さなカボチャたちが大量に飛び出してきた。
「カボチャが増えた!?」
「追えー!」
「捕まえろ!」
「ハロウィン・クエスト開始!」
こうして。
ヨイが最も恐れていた事態は――。
なぜか。
史上最高のアトラクションとして始まってしまった。
だが、ヨイはまだ知らない。
この巨大カボチャは、ただ暴れているわけではない。
その目的は――。
地下に封印された「最後の魔法」を解放することだった。




