第34話 前夜祭の総仕上げ! ハロウィンの街が完成する
「あと一日!」
翌朝。
ヨイは広場の中央で声を張り上げた。
「今日が最後の準備日だ!」
「おー!」
ゴースト。
ゾンビ。
カボチャモンスター。
学園の生徒たち。
そして、小さな魔女ルナ。
全員が一斉に拳を上げる。
「明日のハロウィンを、最高の祭りにするぞ!」
「おーっ!」
街中に歓声が響いた。
ヨイは広場に置かれた大きな地図を広げる。
「確認するぞ。」
ルミナが隣に立つ。
「お化け屋敷、完成。」
パンプが手を上げる。
「ぼくたちが担当!」
「カボチャ料理の屋台、完成。」
ココが答える。
「パンプキンパイもいっぱいあります!」
「ランタン広場。」
カボチャモンスターたちが一斉に手を上げる。
「完璧!」
「ランタンパレード。」
アルが胸を張る。
「俺に任せてくれ。」
「そして――。」
ヨイはルナを見る。
「魔法の演出。」
ルナが小さく頷く。
「頑張る。」
「無理はしないこと。」
「分かってる。」
ルナは杖を握りしめた。
昨日、地下で聞いた言葉が頭に残っている。
『人間と魔物が、再び同じ夜を笑って過ごす。』
そのための祭り。
ルナにとっても、大切な一日になる。
「じゃあ、始めよう!」
街中が一斉に動き始めた。
まずは、お化け屋敷。
「ここにランタン!」
「壁を少し暗く!」
「パンプ、そこに立って!」
「ここ?」
「そう!」
「わあっ!」
パンプが突然飛び出した。
「うわっ!」
近くにいた男子生徒が驚く。
「本番前に驚かせるな!」
「練習!」
「心臓に悪い!」
笑い声が響く。
次は屋台。
「パンプキンスープ!」
「焼きカボチャ!」
「パンプキンパイ!」
「カボチャクッキー!」
甘い香りが街中に広がる。
ココは焼き上がったパイを並べながら、嬉しそうに笑っていた。
「こんなにたくさん作ったんですね。」
「明日はもっと売れる。」
ヨイが答える。
「本当に?」
「絶対。」
「どうして?」
「美味しいから。」
ヨイが一口食べる。
「うん。美味い。」
ココは嬉しそうに笑った。
「じゃあ、もっと頑張ります!」
一方。
街の入口では、カボチャモンスターたちが飾り付けをしていた。
小さな体で木材を運ぶ。
ランタンを吊るす。
布を結ぶ。
そして――。
巨大なカボチャを街の中央へ運んできた。
「これ、どこに置く?」
パンプが尋ねる。
ヨイは少し考える。
「中央広場。」
「大きすぎない?」
「それくらいがいい。」
巨大カボチャは、街の中心に置かれた。
その瞬間。
ルナが近づく。
「……。」
カボチャに手を触れる。
ぽうっ。
紫色の光が広がった。
街中のランタンが一斉に輝く。
「おお……!」
「すごい!」
「綺麗!」
ヨイは目を輝かせた。
「これだ。」
「これが、この街のハロウィンだ。」
ルナは嬉しそうに笑った。
「私、役に立った?」
「大活躍。」
ヨイが親指を立てる。
「えへへ。」
その笑顔を見ていたルミナが、ふっと笑う。
「本当に楽しそうね。」
「うん。」
ヨイは街を見渡した。
「最初は、ただのゴーストタウンだった。」
「でも今は――。」
ゴーストが働いている。
カボチャモンスターが走り回っている。
学園の生徒たちが笑っている。
屋台から美味しそうな香りがする。
「みんなの街だ。」
ルミナが頷く。
「明日は、きっと成功する。」
その時。
ゴーン……。
時計塔の鐘が鳴った。
「……。」
ヨイが振り返る。
「まただ。」
「まだ昼よ。」
ルミナが時計を見る。
「十二時。」
「昨日も同じ時間に鳴った。」
「何か意味があるのかしら。」
ヨイは地下で聞いた言葉を思い出す。
『鐘が十二回鳴った時――。』
「……。」
「ヨイ?」
「いや。」
ヨイは首を振った。
「明日だ。」
「明日の夜に、全部分かる。」
そして。
準備は夕方まで続いた。
最後のランタンを吊るす。
最後の屋台を整える。
最後の看板を立てる。
そして――。
日が沈む。
「……。」
ヨイは街の入口に立った。
目の前には――。
完成したハロウィン・タウン。
オレンジ色のランタン。
紫色の魔法灯。
カボチャの飾り。
お化け屋敷。
屋台。
パレードの道。
「完成……。」
ルミナが小さく呟く。
「うん。」
ヨイは笑った。
「完成だ。」
みんなが歓声を上げる。
パンプは飛び跳ねる。
ココは拍手する。
アルは空を見上げる。
ルナは街の中央に立っていた。
「……。」
その顔は嬉しそうだった。
「明日。」
ルナが呟く。
「たくさんの人が来る。」
「そうだな。」
「たくさん笑う?」
「絶対。」
ヨイは答えた。
「この街で、一番楽しい夜にする。」
その瞬間。
街のすべてのランタンが――。
一斉に消えた。
「……え?」
真っ暗になる。
「何!?」
「停電?」
「魔力が切れたの!?」
誰かが叫ぶ。
ヨイはすぐに周囲を見回した。
「落ち着いて!」
すると。
遠くの時計塔が――。
ぼうっ。
紫色に光った。
ゴーン……。
一回。
ゴーン……。
二回。
ゴーン……。
三回。
「……。」
ヨイの表情が変わる。
「まだ十二時じゃない。」
ルナが震える声で言った。
「違う。」
「これは……。」
ルナは地下を見つめる。
「カウントダウン。」
「何の?」
ルナは答えられなかった。
ただ。
時計塔の鐘が鳴るたびに。
地下から、何かが目を覚ましていく。
そして――。
四回目の鐘が鳴った。
ゴーン……。
街の中央に置かれた巨大カボチャに、一本の亀裂が入った。
ピシッ。
「……。」
ヨイは息を呑んだ。
「まさか。」
その亀裂の奥から――。
赤い光が漏れ始めた。




